非常にうっとうしい震える付せんのアニメーションでタスクを思い出すのだシゴトハッカーズ(4/4 ページ)

» 2008年09月11日 15時30分 公開
[大橋悦夫、佐々木正悟,ITmedia]
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展望記憶には補助ツールを

 ミルクを忘れずに買ってくる――。

 有名なタスク管理ツールである、Remember The Milk(RTM)の名前の由来です。人間はこの「忘れずに○○する」という、「展望記憶」(未来記憶)が弱い傾向にあります。

 そうはいっても、そもそもこれほど抽象的で、高度な展望記憶など、人間以外の動物は扱うことすらできないのですから、「弱い」というのは贅沢な悩みともいえます。

 しかし贅沢な悩みであれ、仕事をするとなると、展望記憶の活躍の機会はとても多いのです。ですから、これが弱ければ、仕事に差し障ります。何とか的確に「忘れずにする」方法を考え出さなければなりません。

 幸いなことに、ほとんどすべての人が展望記憶は弱いという自覚をもっていますから、Remember The Milkをはじめとした、展望記憶補助ツールがたくさんあります。最も簡単なところでは、メモがそうですし、多くの携帯電話に、バイブレーターやアラーム付きのタスク管理ツールが搭載されています。

 ところで、「特定の将来において、忘れずに○○する」目的ならば、スケジューラーなどの、予定管理ツールを使えばいいではないか、と思う人もいらっしゃるでしょう。しかし、予定管理ツールは、開始時刻を決めなければなりません。「忘れずに○○する」のは、忘れさえしなければ、普通、いつ始めてもいいのです。つまり展望記憶の補助ツールとして予定表は向かないのです。

 予定表の最重要の役割は、ダブルブッキングを避けること。営業職の人であれば、同時に訪問できない2つの取引先と、同じ時間に訪問する約束をしてしまうことなどが、ダブルブッキングに当たります。これは何としても避けたいところでしょう。

 しかし、展望記憶を利用して、未来の用事を果たすことは、必ずしもほかの仕事とかぶっていていけないわけでもありません。移動中に、ちょっとした買い物を済ませるなど、むしろほかの予定の中に入ってきてもかまわないのが、「未来のタスク」です。そのため、展望記憶補助ツールとして予定表を使い始めると、ほかの予定が入っている時間帯に、平気で書き込むクセがつきます。

 これはとても危険なことで、こうした予定表に見慣れると、ダブルブッキングをしていても、気がつきにくくなります。そう考えるとやはり、予定表と展望記憶補助ツールは、別々のモノを使った方がいいのです。

 タスク管理ツールで管理すべき「未来の用事」に必要なのは、むしろ「どのくらいの時間を必要とするか」とか、「どこでその用事を果たすか」などの情報です。確実に用事を果たしさえすれば、「いつ」果たすかはそれほど重要ではありません。

 この意味で、タスク管理ツールのタスクを片づけるのは、可能であれば移動時間やスキマ時間など、予定表では管理されていない時間帯を選ぶことが望ましく、その時間中に片付く程度に絞っておく必要もあるでしょう。

筆者:大橋悦夫

大橋
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1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタルハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』、近著に『成功ハックス』がある。

筆者:佐々木正悟

佐々木
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心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。


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