「僕も工場も一生懸命作っていますので、できるだけ長く売りたいと思っています。すぐに供給が止まるような新しい素材はなるべく使わず、定番でよくあるものをセレクトしているのです」
はやりすたりに流されない商品作りを心がけているという齋藤代表の言葉だが、今年の手帳売場を歩くと、違和感を2つ感じた。1つはCOATEDのラインアップが“一般ウケ”するタイプばかりで、2007年秋に見かけた“蛇腹”や“ホログラム”がなかったからだ。
蛇腹手帳については、2008年9月始まり手帳としてラインアップすらしていない。メーカーのカタログにも存在しない。Kさんのスリム「Guild」も店頭になく取り寄せたという。個性的なラインアップが売場から消えたのである。どうしてだろうか? コアなファンがいるはずだが。
もう1つは“COATEDもどき”が目立つこと。具体名を挙げるのは不粋なのでやめておくが、ざっと4つのブランド(大手文具メーカーが多い)がCOATEDと似たデザインを展開している。ドイツ語デザインまでそっくりなものもある。なんだかイヤな気分だ。
「2009年のテーマはWIPE(一掃する、ぬぐう)です。実は、手帳業界がかなりおかしくなってきているような気がします。というのも、売場に行くとあまりにも似たような物が多く、各メーカーもしくはデザイナーの想いが伝わってきませんので」
“WIPE”とは何か? 何を「一掃する」のか――。
「現実にその(文具業界の)まっただ中にいるので、一度退くというか消えたいというか、次の準備のために目立たないようにするというか、そんな想いでWIPEとしました」
なるほど、COATEDのユニークな手帳自体をWIPEすることで、次の新製品を目立たせる、といったところだろうか。
“メーカー・販社の流通力”(売場確保力)と“売り手の都合”(異形・異サイズを仕入れない)で、どこの手帳売場も同質化している。個性を競うはずの文具が同質化でいいのだろうか? かつて百貨店がハマったワナ(売場は販社がつくり、デパートは場所貸しだけ)に陥っていないだろうか?
「やる以上は勝ちにいく」と語る齋藤代表。だから9月手帳は生産数の多い汎用タイプで戦い、時期をずらし販路を工夫して、職人の作る個性派手帳で勝負するのだろう。蛇腹もホログラムもきっと復活するはず。楽しみに待つとしよう。
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