“直流電化エコホーム”とは何か?CEATEC JAPAN 2008

PCからテレビ、洗濯機、エアコンまで、家庭内のほとんどの機器は直流で動作する。ところが家庭にやってくる電源は100ボルトの交流だ。では家庭内の配電をすべて直流でやってしまったらどうだろう?

» 2008年09月30日 17時43分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 直流、交流って聞いたことがあるだろうか? 交流とは電流や電圧の向きが周期的に逆になる電気の送り方のこと。AC(Alternating Current)ともいわれ、家庭のコンセントに来ている電気も交流だ。

 ところが、家庭にある電化製品のほとんどは直流(DC:Direct Current)で動く。ノートPCなどをコンセントにつなぐときに、ACアダプターという黒い箱があるが、あれが交流(AC)を直流(DC)に変換している。テレビやステレオはもちろん、いまやエアコンも洗濯機も内部的には直流(DC)で動いている。「交流でないと動かないのは蛍光灯くらい」(TDK)というほど、家庭内は直流がメインになっている。

 ところが家庭内のコンセントは100ボルトの交流。これをすべて直流にしてしまってはどうか? というのがTDKが提案する「直流電化エコホーム」だ。

太陽電池などで発電した直流電流をリチウムイオン電池にためる。また安価な夜間電力を使って、リチウムイオン電池を充電する。そして各機器には直流で電気を提供する。それが直流電化エコホームのコンセプトだ

 これは、家庭内の配電をすべて直流(DC)化するというもの。1000ワットアワーという大容量のリチウムイオン電池を家庭内に置き、そこに電源を集約。各電化製品に直流で電流を流す仕組みだ。

 太陽電池や風力発電機が生み出す電気も、これまではいったん交流に変換して、それをテレビなどで使うときに再度直流に戻すということをやっていた。直流電化エコホームであれば、直流のままリチウムイオン電池にため、変換することなく利用できる。

 白熱灯や蛍光灯は交流で動作するが、LEDは直流で動くため、LED照明には交流を直流に変換する装置が都度組み込まれている。これが小型のLED照明を作るためのネックの1つだ。直流で電気を流せばこれも解決する。

 発想の元となったのは、交流から直流に変換するときに発生するロス。TDKでは変換効率を約93%と見積もっており、7%が変換のために失われていると話す。「7%というのも良いときの値。すべて直流で済ませられれば1割近くのロスをカットできるのではないか。ロスなく使えばCO2も減る」(TDK)

 インターネットデータセンターなどに置いてあるサーバも当然直流で動作するが、海外を中心に、交流ではなく直流で電源を供給すべきだという議論もある。交流か直流か……という議論は、電力事業黎明(れいめい)期の「電流戦争」を思い出す。当時は交流のほうが電圧の変換が容易だということが利点だったが、現在は直流電流の変換も難しくない。「直流電化には高圧の直流の変換(DC/DC変換)が重要だが、TDKの技術がここで生きる」(TDK)

 遠くの発電所で作った電力を運んできて使う時代から、太陽光発電や燃料電池など、家庭のすぐ近くで発電も行い、家庭内で使うスタイルが身近になりつつある。いったん交流に変換するというロスをなくし、すべて直流で済ませる。直流電化エコホームのコンセプトは、案外現実味を帯びてきている。

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