その20 ホテルチェーンの価格戦略は？：ビジネス力1分間トレーニング

超一流ホテルチェーンを世界展開しているザ・セレブホテル。低価格なホテルに進出したいですが、超一流イメージに傷が付かないか心配です。さて、ザ・セレブホテルはどうすべきでしょうか？

[西村克己，ITmedia]

Question

　ザ・セレブホテルは超一流ホテルチェーンを世界展開しています。世界の主要都市と有名リゾート地域にすでに進出しています。

　事業拡大のため、カジュアルで低価格なホテルの進出にも意欲的です。しかし低価格なホテルに進出してしまうと、超一流イメージに傷が付かないか心配です。

　さて、ザ・セレブホテルはどうすべきでしょうか？（複数回答可）

1. ブランドを傷付けるので安いホテルに進出しない
2. 同ブランド名で安いホテルに進出して知名度を上げる
3. 安いホテルに新しいブランド名を付けて進出する
4. ビジネスホテルチェーンを買収して進出する

Answer

今回の問題は『経営戦略1分間トレーニング』の56問目から出題

　同じブランド名で高い・安いがあると顧客は混乱します。高品質で高価格、カジュアル品質で低価格など、製品と価格を組み合わせる方法もあります。価格帯毎にブランド名を変えていきます。

　（1）の安いホテルに進出する場合は、新しいホテルチェーン名にします。（2）の同ブランド名で安いホテルは、高級ブランドを傷付けます。（3）の新しいブランド名で進出、（4）の買収して新しいブランド名で進出がおすすめです。正答例は（3）（4）です（1でも可）。

解説：マーケティング・ミックスの「価格」

　米国の学者であるジェローム・マッカーシーが提唱したマーケティングミックスは製品（Product）、価格（Price）、プロモーション（Promotion）、流通（Place）の4Pです。このうち2つめのPである価格が今回のポイント。プロダクトが決まったら、いくらで売るかを決めなければいけません。

　プライスの視点は、いくらなら売れるかという、顧客の「値ごろ感」が重要です。プライスは、生産コストだけで決めるものではありません。価格は市場と顧客との駆け引きで決まるからです。オープン価格が増えているのは、顧客が製品の価値と価格を選択する時代になったためです。

　プライスは、具体的には、「希望価格」「割引」「優遇条件」「支払期限」「信用払い」などを定義することです。「ローン金利0％キャンペーン」などは、値引きの適用例です。

　高級品質で高価格、そこそこの品質で低価格というように、プロダクトの品質と価格を組み合わせる方法もあります。マリオット・ホテルグループでは、品質と価格を組み合わせて4つのブランドのホテルチェーンを展開しています。顧客側のニーズに合わせた選択肢が広がります。

著者紹介　西村克己（にしむら・かつみ）

　岡山市生まれ、大学教授、経営コンサルタント。1982年東京工業大学経営工学科大学院修士課程終了。富士写真フイルムを経て、1990年に日本総合研究所に移り、主任研究員として民間企業のコンサルティング、講演会、社員研修を多数手がける。2003年より芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授。専門分野は、MOT（技術経営）、プロジェクトマネジメント、経営戦略、戦略的思考、論理思考、図解思考。

　主な著書に、『経営戦略のトリセツ』『よくわかるプロジェクトマネジメント』『図解する思考法』（日本実業出版社）、『戦略構想力が身につく入門テキスト』『論理的な考え方が面白いほど身につく本』『論理的な文章の書き方が面白いほど身につく本』（中経出版）、『戦略思考トレーニング』『論理的な考え方が身につく本』『論理的な話し方が身につく本』（PHP研究所）、『スピード仕事術』『戦略経営に生かす兵法入門』（東洋経済新報社）、『脳を鍛えるやさしいパズル』（成美出版）など、約60冊。

左から『論理力1分間トレーニング』『戦略思考1分間トレーニング』『問題解決力1分間トレーニング』『経営戦略1分間トレーニング』