田舎にいてもチャンスはつかめる――「Chamap」でコンテスト優勝、kentaroさんひとりで作るネットサービス(1/2 ページ)

地図上でキャラクター同士がチャットできるマッシュアップサービス「Chamap」が、「第4回マッシュアップアワード」で見事最優秀賞に輝いた。作り上げたのは福井県在住のkentaroさん。このサービスを作るため、kentaroさんが取った大胆な行動とその想いとは?

» 2008年12月11日 15時00分 公開
[田口元,ITmedia]

 ひとりで作るネットサービス第35回は、地図を見ながらかわいいキャラクターでチャットができるマッシュアップサービス、「Chamap(ちゃまっぷ)」を作り上げたkentaroさん(29)に話を聞いた。地方在住でもチャンスを生かせる時代になった、と話すkentaroさん。彼がこのサービスに込めた意味とは何だったのだろうか。

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 「あんな田舎のやつでも優勝できるんだ、ということを示せたと思います」。kentaroさんが作ったChamapは、リクルートとサン・マイクロシステムズが毎年行っているプログラミングコンテスト「マッシュアップアワード」の2008年度の最優秀賞作品に選ばれた。kentaroさんは福井県出身のエンジニア。いままで福井県外で生活したことも仕事をしたこともなかった。

 「地方にいるとやはりコンプレックスがあります」と言うkentaroさん。東京の方が勉強会も多いし、やっぱり行ってみたい……。しかし福井での生活もある。ただ、だからといって何もしないわけにはいかない。「エンジニアとしてやっぱり多くの人が使ってくれる何かを残したい、という願いがあります。今回のコンテストはそのきっかけを与えてくれました。コンテストの応募はどこからでもできます。地方にいたとしても、もっとチャレンジすべきだと思います」

「5位に食い込みたい」一心で仕事を辞める

 kentaroさんは大学卒業後、地元のITベンダーに就職した。2年後に別のITベンダーに転職し、スキルを磨いてきたが、仕事は基幹システムにかかわるものが多かった。日々の仕事をこなしつつもぼんやりと独立を考える毎日だった。「時代が時代でしたし、もっとWebにかかわりたいと思っていたのです」。2006年11月、kentaroさんは一念発起して独立することにした。屋号は「DA-Studio」。父親から常に聞かされてきた「Dream and Action」という言葉が好きだったからだ。

 仕事はWebサイトの製作とサイト上のシステム製作が主だった。独立当初は大変だったが、知り合いづてに顧客を増やし、なんとか生活ができるまでになった。仕事で主に使っていたのはオープンソースのCMSであるXOOPS。開発コストを抑えるために採用した。またさまざまな追加機能を実現するモジュールの数が多かったのも採用した理由だった。

 ある仕事で、Google Mapsを使わなくてはならなくなった。XOOPS上でその機能を実現するために試行錯誤し、なんとか作り上げた。そして作り上げたあとに「ほかの人も使いたいかもしれない」と思い、XOOPSのモジュールとして公開した。GNavi(ジーナビ)と名づけたそのモジュールはぽつぽつとダウンロードされはじめ、実際に使ってくれた人からお礼のメールも届くようになった。寄付してくれる人もいた。多くの人に使ってもらえるものを作る喜びをその時に知った。

 その後もGNavのバージョンアップを繰り返した。ある日、開発していたら地図上にもっと情報を載せてみたくなった。調べたらホットペッパーやじゃらんがAPIを提供していることを知り、それらの情報をGNaviの上で動かしてみたら思いのほか楽しかった。もっとやってみよう、とネットで検索していたら目に入ったのがマッシュアップアワードだった。

 優勝者には賞金も出るし、大勢の人の前でプレゼンができる。kentaroさんは1度でいいから表彰台で受賞スピーチをしてみたい、という夢をぼんやりと持っていた。「受賞スピーチをするには5位以内に入らないといけなかったのです。なんとか5位には入るぞ、と目標設定をしてみました」

 しかし応募するための作品を作るには時間がなかった。普段の仕事もあるし、子供は2人目が生まれたばかりだった。しかしこのチャンスにはなんとしてもチャレンジしてみたかった。そこでkentaroさんは一大決意をする。「1カ月半、仕事を辞める。応募作品のためだけに時間を使う」と決めてしまったのだ。すべての仕事をその期間だけキャンセルし、家族にはなんとか理解してもらった。

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