注目を集めたコクヨの「針なしステープラー(2穴タイプ)」。これまでの1穴タイプとは異なり、とじた書類をすぐにファイリングできるようにしたのが特徴だ。編集部ではさっそく実物を見に行ってきた。
針の不要なステープラーとして、注目を集めたコクヨS&Tの「針なしステープラー(2穴タイプ)」。これまでも1穴タイプの針なしステープラーは販売されているが、業界初の2穴タイプで、しかも穴の場所を調整することで、綴じた書類をすぐにファイリングできるようにした。
誠 Biz.IDでは発売前に取材を敢行。針なしステープラー(2穴タイプ)の実物を触ってくるとともに、開発を担当したコクヨS&Tの石田明美さん(クリエイティブプロダクツ事業部)と増田和之さんに話を聞いてきた。
石田さんによると、今回の針なしステープラー(2穴タイプ)の特徴は2つ。1つは、冒頭でも書いた通り2穴タイプであること。もう1つは、標準的なコピー用紙であれば10枚までを綴じられることだ。構造的には、これまでの針なしステープラーと同様のもので、縦に切る刃とU字に切る刃で紙をとじる。ミシンの針に下糸を通すような構造をイメージしてもらえば分かりやすいかもしれない。
「環境対策に取り組んでいる企業は、分別廃棄に困っている」と石田さん。例えば、書類からわざわざ針を外さなくてもいいステープラーとコクヨS&Tの「オール紙(かみ)」のような紙できているファイルを組み合わせて利用すれば、「書類の発生段階から分別廃棄をしなくてすみ、省力化にもつながる」というわけだ。
実のところ、廃棄業者によってはステープラーの金属針が書類に付いたままでも問題ないが、ステープラーの針そのものが不要なため、針を探してステープラーが利用できない――といったことも防げる。2穴パンチとしても、紙に入れた切れ込みを折りたたむようにとじる仕組みのため、通常の穴空けパンチのような紙くずがでないのはメリットだろう。
「針なしステープラーの機構自体は、100年ぐらい前から基本的なパテントがあった」(石田さん)というが、10枚をとじるために工夫を重ねた。その工夫の1つが切り口だ。縦に切る刃の切り口を調整したのである。もともとはIのような切り口だったが、これでは細すぎて10枚の厚さを通すと破れてしまう。そこでIの両サイドを伸ばしたHのような切り口に代えて、厚みがあっても「すんなり入るようにした」(増田さん)というわけだ。
「Iの切れ込みを長くすることでも10枚の紙を通すことができたが、その方法だと切り口の幅が広くなる。Hにすることで、切り口の幅も同じサイズを維持できた。でも、開きすぎるととじた紙が外れやすくなるので、ここでも保持力とのバランスなのです」(増田さん)
もちろん現時点ではできないこともある。その1つはとじ直し。「基本的には『できない』とお答えしている。紙を合わせるゲージがあることを前提とした場合、閉じ直そうと思えばできるけど、同じような切り込みが再現できるかどうか保証できない。手で外して手で入れることも考えられるけど、かなりの労力で現実的ではない」(石田さん)。また、用紙を1枚だけ穴空けしたいというのもおすすめしないという。「厚みが出てしまうし、(通常の2穴パンチよりも)穴が大きくなってしまう」からだ。
はてなブックマークでは「価格が高い」という声もあった。「確かにパーソナルなイメージだと5000円台は高いが、1穴でも金属製のものだと4000円台。2穴と10枚とじという付加価値を考えてもらえれば」と石田さん。「営業が持って行く提案書や見積書に活用すれば、クライアントに対して環境対応をアピールできるかもしれない」
発売は12月9日。発売後の反応次第では1穴タイプのようなバリエーションも登場する可能性があるという。12月10日から東京ビッグサイトで開幕する「エコプロダクツ2009」にも出展するとのことなので、興味ある人は見に行ってはいかがだろうか。
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