顧客訪問はペアで行く(その2)――オブザーバー上司のススメ研修に行ってこい!(1/2 ページ)

上司が営業同行する際にありがちなのが、「すべて上司が説明してしまい、本来の営業担当者が居場所をなくしてしまう」というケース。これでは担当者も育たず、お客様との関係も長続きしません。

» 2010年03月23日 12時46分 公開
[原田由美子,Business Media 誠]

 前回の記事では、外回りの営業が内勤の営業アシスタントを紹介することで、お客様が喜び、かつ自社の業績向上にも繋がった実例をご紹介しました。今回は、上司を連れていくことで、継続的な業績向上につながったケースをご紹介します。

「俺の手柄」上司

 上司が営業担当者に同行するケースを想像してください。よくある光景として目に浮かんでくるのは、

  • 本当に売れる余地がないか探りに行く
  • 営業担当者の力がないので、上司がクロージングしに行く

 といった、営業担当者にとってはちょっと気の重い場面ではないでしょうか? 訪問時も上司ばかりが話し、営業担当者は押し黙ったまま。やや苦笑いでお客様の様子をうかがっているだけ。

 そして、運よく成約に至ると“営業はこうやるんだ”という手本を示せたことに満足し、上司はさらにクロージング寸前の案件に同行したがるようになります。

 マンガのような光景ですが、わたしの会社の取引先でも、上司が同行しているケースでは上記のようなことがあります。また、わたしのクライアント(人事部門や総務部門)にそのようなことがないかヒアリングしてみたところ、「上司が来るケースは、営業担当者がかわいそうなことが多いですよね。こちらがかわいそうになって仕事を出しても、担当者に主体性がなくなるのか、結果としてあまりいい仕事をしてもらえない。その結果、長いおつきあいにならないことが多いですよ」という話が聞けました。

 上司が良かれと思ってしているであろうことをあまり悪く言いたくはありませんが、実際には、営業担当者が育たない、お客様との関係が長続きしないなど、あまり良いことはないようです。

上司が営業同行するタイミングとは?

 それでは、上司は営業に同行するべきではないのでしょうか? いいえ、そんなことはありません。

 顧客の要望に応えるには、お客様先の中長期での計画を知るために、経営者に話を聞くこと、担当者やその上司、関連する部門の人と面識を持っておくことが、上司として非常に重要です。そのような目的であれば、ためらいなく取り組むべきでしょう。

 しかし、現実には目先の売り上げを上げなければならず、押しの弱い営業担当者に同行し、仕事につなげなければならない状況もあります。それでは、そのような状況でできる有効な同行営業とは何でしょうか?

目先の売上にも効果がある「オブザーバー上司」

 ある営業管理職が、実際に取り組んだ事例をご紹介します。

 売上がなかなか上がらない営業担当者がいました。その営業担当者は、訪問するお客様の数、訪問時間、お客様からいただいてくる情報をとっても、同僚に劣るところはありません。むしろ努力家であるため、同僚以上と言える行動量です。

 しかし、売上がついてこない。その理由が、社内で報告を聞いているだけでは全く分かりません。人当たりも良く、人に好かれるタイプの人がなぜ? と、その上司はいつも疑問に思っていました。

 ある時その上司は、「A社は、今後の取引のことも考えると一度話を聞いてみたいから、連れていってくれるかな」と担当者に伝え、アポイントを取ってもらいました。

 ただし、その担当者にはヒトコトだけ次のように伝えました。

 「基本的にわたしは話さないから、普段通りに話をしてほしいんだ。もし、お客様にお聞きしたいことがあったら、ちょっとだけ口をはさませてもらうかもしれないけれども。長くは話さないと思うから」

 同行営業当日。客先に向かうと、上司はあいさつだけをすまし、その後はずっと話を聞くことに徹しています。お客様と営業担当者の話に相づちを打つなど、その場の雰囲気に合わせたコミュニケーションをとっています。

仕事を引き寄せる「質問力」

 そして、商談も終盤に差し掛かった時に、上司がお客様にヒトコト質問をしました。さて、その質問はどのような質問だと思われますか? 次のページに進む前に、ちょっと考えてみてください。

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