便利なWebサービスが新しく出るたび、個人が情報を発信する障壁は下がっていく。ブログをはじめ、mixiやTwitterなどのSNSが登場し、誰もが簡単に情報発信できる環境が整ってきているが、いいことばかりではない。4人はこのごろ頻発する炎上に、その影響を見ている。
松永 ブログが流行り始めた2003年ごろを振り返ると、「記事にさまざまな人が自由にコメントをしたり、トラックバックを残したりして議論が深まっていくのではないか」と、情報を発信する敷居が下がるのを楽観的に捉える人が多かったんです。ところが結果的には、他人に罵声を浴びせるような炎上が悪目立ちするようになってしまいました。対立する意見があるなら落ち着いて話し合えばいいのに、安易に罵倒し合う人たちが目立ちました。今のSNSでも同じことが起きていると感じます。
さらしる 情報発信の敷居だけでなく、最近は炎上の敷居も下がったと思うんです。昔は情報を拡散させる役割を2ちゃんねるが主に果たしていたのですが、今ではまとめサイトやTwitterなど、情報を受け取ったり拡散したりする場がかなり増え、誰でも簡単に“火”を点けられるようになってしまったと感じますね。
加えて、今は子供や若い人がTwitterを始めるのを機に、ネットがどのようなところか知らないままネットデビューしたりしますよね。これって自動車の運転に例えると、仮免許すら取らずにいきなり路上教習に出るようなもので、大変危ないと思うんです。ネットに書いたことはたくさんの人に見られ、半永久的に残ると知らずに、うっかり「飲酒運転しちゃった」などと軽い気持ちで投稿して炎上してしまい、内定を取り消しにされたり、退学処分にされたりと、人生を棒に振ってしまう人もいます。失うものが大き過ぎますよね。
まなめ Twitterに投稿したつぶやきは不特定多数の人に見られるなど、サービスの基本的な仕組みを知らないまま利用するのが問題だと思いますね。僕は職業がシステムエンジニアで、プログラムを書くのが好きなこともあって、自分で大体の仕組みを把握できないサービスは使いたくないですね。Twitterはできる行動も限られていてシンプルな仕組みなので、一般のユーザーも最低限の仕組みくらい、知っておくべきなのかなとは思います。
ネットの仕組みや利用のリスクを知らない、ネットリテラシーの低い人が気軽な気持ちでTwitterを始め、うかつな発言を投稿してしまう。このごろ話題になる炎上のニュースはその場合が大半だ。次々に生み出される便利なWebサービスのお陰で、誰でも簡単に情報発信できるようになった。だが手軽だからといって、ネットで情報発信する危険性が取り払われたとまで錯覚してはならない。むしろネットユーザーの絶対数が増えたことに着目すれば、自分が発信した情報は今まで以上に多くの人の目に晒されるのを意味する。つまり、より慎重な姿勢で利用しなければならないはずなのだ。
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