モバイルクラウド時代の6つのビジネスヒントモバイルクラウド(2/3 ページ)

» 2013年03月01日 09時30分 公開
[八子知礼,Business Media 誠]

5.リードタイムを極小化する

 5つ目は「リードタイムを極小化する」ことである。既に述べたように、サーバ調達のリードタイム(調達時間)で数千分の一、クラウドでのシステム構築はバリューチェーン自体をクラウド上に上げてしまえるので、システム構築に要する期間は3分の1〜5分の1と劇的に短縮できる。

 企業環境ではベンダー目線でいえば、発注からシステム提供までの時間を極小化できればスピーディな事業展開が可能となるし、ユーザー部門も既にクラウドのように短期間で柔軟な対応ができるシステム構築手段があることを知っている。リードタイムを長く取る時代ではなくなっている。

 さらにコンシューマ環境においても、興味は移ろいやすく、納期待ちになった途端に注文をキャンセルすることは、もはや日常的に起こっており、リードタイム(待ち時間)の発生は顧客にとってはその企業への優先度がどんどん下がる事態になっている。経営面からのニーズもあり、とにかく提供するプロダクト、サービスのリードタイムは極小化することが求められるのだ。

6.エコシステム志向である

 6つ目は「プラットフォーム/エコシステム志向である」ことである。エコシステムとは経済圏を拡大する考え方で、自分たちでユーザーやソリューションやノウハウを抱え込むのではなく、他社にも積極的に利用してもらい、利用者、パートナー、ビジネスモデルの広がりを創出することが経済圏の拡大につながることを理解すべき時代になっているのだ。

 あるサービスやシステムを作ったとき、それがどうやって次に広がっていくのかを考えた上でビジネスを展開しないと、すぐに最初のサービスは廃れてしまうか、将来の拡張性を問われた瞬間に次がないとユーザーからは見放されてしまうという、なかなかうまくいかない時代になってきているのだ。


 以上挙げた6つのヒントのように、これまでとは異なる考え方でビジネスをしていかなければならない時代に差しかかっている。多様なモバイルデバイスが百花繚乱のごとく登場し、同様にクラウドサービスも多様なサービスが登場しており、双方ともにもはや会社が管理できないものが勝手に個人と会社の環境を跨いで使われている状況となってきている。

 この状況を指して著者は「デバイスの民主化とサービスの民主化が起こっている」と表現することがある。すなわちベンダーの言いなりではなく、ユーザーが選択して実行する力を持つようになっているのだ。

 ユーザー側が力を持つと、既得権のある組織や会社にがんじがらめになることはなくなる。その結果、会社を出てパワーを持った個人とソーシャルネットワークで連携し、そのパワーを増幅していくということが既に起こり始めているのだ。

 本当の意味で人のネットワークとしてつながり、ともに作り上げていくビジネスの時代になっている。これまで「競争」していたようなライバルや競合企業とともに知恵を絞ってコラボレーションし、新たなサービスと市場をともに作り出していく「共創」の時代に変わってきているのだ。

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