それでは、経理の仕事が分かっていない社長から、正当に評価される経理となるにはどうしたらよいのでしょうか。
社長が経理の仕事が分からないからといって、手を抜いてはいけません。与えられた仕事には最善を尽くします。経理の仕事のことを分かっている第三者、例えば顧問税理士や税務署の職員、銀行の担当者などから見たとき、「この人は仕事をきっちりやっている」と思われることが大事です。
きっちり仕事をしている経理とそうでない経理はすぐに分かりますし、先ほどの私の話のように、第三者的な評価は社長も気になるので伝わります。その評価を聞いたうえで、社長は経理の評価を行っているのです。
第三者から「経理の仕事がずさんだな」と思われたら致命的です。
また、社長は自らの基準で経理の評価をします。評価される最も分かりやすい例は、「社長に気に入られる行動を取る」経理です。気に入られるためにも、社長から話しかけられたら、いつもニコニコ笑顔で対応しましょう。
仕事の指示が出されたときに「なんで話しかけてきたの? いま電卓で集計してたのに、また面倒なことを押し付けるんでしょ」という表情をしていないでしょうか。社長も人間ですから、好きな人間の評価は甘くなり、嫌いな人間の評価は辛くなります。
ただでさえ、ちゃんと仕事の内容を理解した評価をしてもらえないのですから、自ら進んで辛い評価に仕向けることはありません。
その上で、誰からも分かりやすく評価される姿勢を打ち出すのです。
誰からも分かりやすいのがスピード対応です。急に依頼された仕事に嫌な顔をせず、自分の仕事よりも優先させて、片付けるための行動に移しましょう。依頼された仕事を相手の予想より早く終えれば、「あの人は仕事が速い」という評判が広がっていきます。
また、スピード対応をするためには、日頃から経理の仕事をため込まず、前倒しして進めておく必要があります。
普段の経理の仕事に余裕がないと、急に依頼された仕事に対応する時間がなく、評価を上げるポイントで評価を獲得できなくなってしまうからです。
ニコニコ笑顔でスピード対応していると、自然と仕事が殺到するようになります。殺到した仕事をテキパキこなしていくには、仕事を素早く仕上げるスキルが必要となるでしょう。
判断スピードを上げるためには、経理回りの知識も必要となります。スピード対応という視点でスキルや知識を身に付けていくと、経理の評価も自然に上がっていくものです。
「経理の仕事が評価されていない」と思っているとしたら、それは評価の基準がずれているからかもしれません。
経理部内での専門家同士の仕事の評価と経理の人を外から見たときの評価の基準は異なります。
きちんと評価されないと嘆くよりも、現実を分析してどのように対処するのが受けがよいのか、結果的にトクになるのか、前向きに考えていきましょう。
税理士。税理士事務所勤務、リサイクルショップ経営等を経て2006年佐藤税理士事務所を設立。ITを駆使した生産性向上支援、経理業務効率化等支援が得意。2010年にはAll Aboutプロファイルで人気1税理士に。
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