エプソンのドキュメントスキャナ「ES-D200」はScanSnapのライバルに成り得るか(5/5 ページ)
ドキュメントスキャナ市場が元気だ。ScanSnapシリーズなどを発売するPFUの市場シェアは過去5年で5倍近くも伸びた。ここに攻勢をかけるのがフラットベッドスキャナメーカー。今回はエプソンのドキュメントスキャナをレビューする。
まとめ:多くの枚数をセットできるのはメリットだが、重送検知に課題
以上ざっと見てきたが、一度にセットできる枚数が多い点は大きなメリットだ。解像度の違いや補正オプションの有無によって速度や品質が大きく変動する点は気掛かりだが、本を丸ごと1冊セットできるというのは、最低でも2〜3分割してセットしなくてはいけないScanSnap S1500にはないメリットである。原稿の追加セットの手間が不要なことが、読取時間が長いことを相殺して余りあるというわけだ。この特徴だけをピックアップすれば、電子書籍の「自炊」に向いた製品である――ということになる。
ただ、今回試用していて、こうしたセット枚数に関するメリット以前に、どうしても気になった点がある。それは「重送を検知せずに見逃したケースが何度かあった」ということだ。ScanSnapであれば、重送、つまり紙の重なりを検知すると、ユーティリティがエラーの発生を表示し、最後に読み取った原稿を表示するとともに、原稿を何枚か戻したうえで続けて読み取るか、それとも中止するかを選択できる。あまり見たくないダイアログではあるものの、少なくとも重送をしっかりと検知して対応をしてくれるという意味では、信頼がおける。
ところが本製品では、重送が発生しているのにそれを見逃す場合がある。前述の(1)のテストにおいても、10枚ある原稿のうち8枚しか読み取らずに知らん顔をしていることがあったくらいだ。相性が悪い特殊なコート紙などであればまだしも、インクジェットプリンタで出力した一般的なPPC用紙だったことを考えると、やはりちょっと怖い気がする。
本の自炊でなによりも怖いのは、元の本を処分してしまったあとで、ページの抜けに気がつくということだ。ページが回転しているとかカラーモードを誤判定しているのであれば手のうちようがあるが、ページが欠落しているのにあとから気がついても、まったくどうしようもない。再入手不可能な本であればそれはもう致命的だ。
その点(あくまで筆者の経験上ではあるが)必ず何らかのアラートを出してくれることから安心感のあるScanSnapと違い、本製品はいまいち信頼が置けない。これが超音波センサのないことに由来するのか、それともユーティリティレベルの問題かは不明だが、この問題がある限り、個人的にはおすすめしにくいというのが率直なところだ。救いがあるとすれば今回試用したのが発売前の評価機であるということで、製品版で修正されていることを切に願いたい。
関連記事
- エプソンがビジネス向けドキュメントスキャナ参入、毎分40枚読み取り
セイコーエプソンは、ADF搭載のドキュメントスキャナ「ES-D400」を発表した。読み取り速度は、A4用紙(200dpi)で毎分40枚。「45万回のスキャンができる耐久性が売りだ」という。 - エプソンがドキュメントスキャナのエントリーモデル、毎分25枚で4万円台中盤
エプソンは、A4ドキュメントスキャナ「ES-D200」を発売する。2009年12月に発売した「ES-D400」のエントリーモデル。A4用紙の読み取り速度は毎分25枚。 - コンパクトドキュメントスキャナ、ScanSnapと“最強のライバル”を比べてみた(前編)
紙書類のデジタル化に威力を発揮するドキュメントスキャナ。コンパクトタイプの最新モデルにあたるPFU「ScanSnap S1300」とキヤノン「imageFORMULA DR-150」のガチンコ対決をお届けしよう。前編となる今回は、基本スペックとサイズおよび設置面積の違い、開閉の手間などを、動画を交えながら紹介する。 - コンパクトドキュメントスキャナ、ScanSnapと“最強のライバル”を比べてみた(中編)
コンパクトタイプのドキュメントスキャナ、PFU「ScanSnap S1300」とキヤノン「imageFORMULA DR-150」のガチンコ対決。中編となる今回は、実際に書類をスキャンしてみての使い勝手を中心にお届けする。 - コンパクトドキュメントスキャナ、ScanSnapと“最強のライバル”を比べてみた(後編)
これまでにスペック、読み取り速度、画質などを比較してきた「ドキュメントスキャナガチンコ対決」。最終回となる今回は、両機種のオリジナル機能を比較しながら、どちらが“買い”か考えてみた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.