マンガ『ONE PIECE』に学ぶ、ベンチャー起業の理想型:世界を変える80年代生まれの起業家(2/2 ページ)
16歳で単身渡米し、21歳で米国で起業。現在、スタートアップ起業家を支援するネットワークを運営する伊地知天さん。インタビューの前編では、全てを自分でやろうとせず、必要なら他人の力を借りてチームにするという心構えの必要性について聞きます。
必要なものは外から持ってくればよい
「なぜ、起業をしないのか?」という質問に対する答えは「○○がないから」「●●ができないから」というのが多いと思います。
実は、そのやらない理由は、解決できることばかりなんです。自分が持っていなければ、外から持ってくればよいのです。お金がないなら、資金を集めればよい。人脈がないなら、人脈を持っている人を仲間にすればよい。
例えば、フレンチレストランをやりたいとき、自分が料理ができなければシェフを探してきますよね?
「今までにない、こんなレストランをつくりたい」というビジョンがあれば、そのビジョンに共感してくれる人を集めて、チームをつくることができます。ホール係も、必要なら探せばいいのです。社長が全部できなくてはいけないと思うのは間違いです。実際、僕はWeb関連の会社をいくつも起業していますが、自分ではプログラムもできないし、システムエンジニアでもありません。こういうサービスをつくりたいというアイデアを持って、必要な人を集めました。
自分がつぎつぎと起業できたのは、「人との出会いに恵まれたから」という実感があります。なので、そういう出会いを促進する場としてcrewwをつくりました。
ビジョンに共感した人が集まってきて、チームをつくることができるし、アイデアと熱意があれば、実現できるということを多くの人に知って欲しいです。
マンガ『ONE PIECE』の役割分担が、ベンチャー起業の理想型
米国で会社をつくるとよく分かるのですが、米国人は自分の役割というのを明確に意識しています。役割分担、つまりスペシャリティがハッキリしているんですね。米国人に、その役割分担から外れることを頼むと「それは自分の仕事ではない」とハッキリ言われるんですよ。行き過ぎるのはよくないですけど、起業家、社長が全部できる必要はなくて、足らないモノは外から連れてくればよいという意味で、役割分担を意識することは大切だと思います。
マンガの『ONE PIECE(ワンピース)』(※注1)が分かりやすいです。それぞれのチームの中のスペシャリティがはっきりしているじゃないですか? 例えば、ゾロ(※注2)は、絶対料理作らないでしょ? 得意なところを持ち寄ってチームをつくるというのは、スタートアップベンチャーの基本だと思います。
また、crewwでは、アドバイザーという制度をつくっています。すでに株式公開を経験しているような人が、若い経営者を支援する仕組みです。経験者が関わることで成功率が高くなる。米国では一般的なことですが、日本でもそういうネットワークをつくっていきたいです。
もう1つ変えないといけないのは「失敗を悪」ととらえる考え方です。米国の話ばかりしたい訳ではないのですが、シリコンバレー(※注3)には、何度か失敗してその経験を踏まえて大成功した起業家がたくさんいます。失敗を恐れずに、挑戦するスピリットを大切にしたいですね。
(続く)
著者プロフィール:
山口哲一(やまぐち・のりかず)
1964年、東京生。早稲田大学第二文学部中退。音楽プロデューサー、コンテンツビジネス・エバンジェリスト。
株式会社バグ・コーポレーション代表取締役。『デジタルコンテンツ白書』(経済産業省監修)編集委員。
主な著書に『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)、『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』(リットーミュージック)、『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社・共著)などがある。
Web連載:
WEDGE infinity「ビジネスパーソンのためのエンタメ業界入門」
CREAweb「来月、流行るJポップ〜チャート不毛時代のヒット曲羅針盤」
誠ブログ:
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