社長に問われるのは「究極の実行力」:選ばれ続けるリーダーの条件(4/4 ページ)
マネジメントの世界で「選ばれる」が続くと、最終的には社長に行き着きます。社長ほど大変なものはありませんが、面白いものもありません。ぜひ人生で一度は社長というポジションを経験してほしいと思います。社長にしか見えない世界が、そこにはあるからです。
言い訳ができないのが社長という立場
一方で、社長はこれ以上ないほど大変なポジションです。
会社で起こったことの全責任を社長は負います。社員が不祥事を起こしたときも、お客様に被害を与えてしまったときも、謝罪すべきは社長です。ナンバー2ではありません。
ナンバー2まではビジネスマンの視点ですが、社長になると自分という個人が公に属している法人そのものになったような感覚が生まれます。
もちろん、数字に関するすべての責任も負います。ここでは、言い訳は一切通用しません。社長のエグゼキューションの結果が、そのまま数字に表れているからです。「誰が悪い」という言い訳ができないのが、社長という立場です。
また、お客様も社会も、社長を見ています。ナンバー2のことは、ほとんど誰も知らない場合も多いです。そして、社員も全員、社長の言動に注目しています。これは世界中どこに行っても同じです。ですから、人と話していても言葉に細心の注意を払うようになります。望むと望まざるとにかかわらず、社長の言葉は会社の意思と捉えられます。
このように苦しいことも含めて、できればぜひ一度、社長というポジションを皆さんも経験してみてください。万人向けではないかもしれませんが、同じ人生なら、苦しみも楽しみも大きいほうが面白いのではないかと思います。
引退することをいとわない
一度やるとクセになるかもしれませんが、社長の座にしがみついてはいけません。強いポジションに同じ人間がずっといると、会社の空気が詰まってきます。長くても5年くらいだと思います。
誰もが「自分がいないとこの会社はダメだ」と思いたがりますが、組織というのは誰か1人が辞めたくらいでつぶれるほど、ヤワなものではありません。極端な例ではありますが、あのスティーブ・ジョブズが辞めても、アップルはすぐにはつぶれていません。寂しいですが、社長の自分がいなくなっても組織は動いていきます。
そのためにも、在任中に後任を育てておくことが大切です。派閥や創業一家の血縁関係などではなく、育てた後任が下の人間から選ばれて社長になるのが理想です。
(選ばれ続けるリーダーの条件=終わり)
著者プロフィール:
山元賢治(やまもと・けんじ)
1959年生まれ。神戸大学卒業後、日本IBMに入社。日本オラクル、ケイデンスを経て、EMCジャパン副社長。2002年、日本オラクルへ復帰。2004年にスティーブ・ジョブズに指名され、アップル・ジャパンの代表取締役社長に就任し、現在、(株)コミュニカ代表取締役。(株)Plan・Do・See、(株)エスキュービズム、(株)F.A.N、(株)マジックハット、グローバル・ブレイン(株)の顧問を務める。私塾「山元塾」を開講。
関連記事
- これからの働き方、新世代のリーダー
- 仕事は70%程度――ぶら下がる20代を次世代リーダーに変える処方箋
指示されたことはこなすが、それ以上はあえてしない。そんな若手社員が周りにいないだろうか? 「ぶら下がり状態」の社員にリーダーシップ力を付けてもらうために、上司や会社、本人に何が必要なのか。 - リーダーは部下に「指示」ではなく「意図」を伝えよう
「指示」を与えられた人は、指示通りに動くだけです。タスクの完了だけを目指し、必要最低限のことしか考えなくなるのです。 - あなたの志は何ですか? 志なしリーダーの10の行動
リーダーシップを発揮するうえで、最も重要なポイントは何だろうか。これまで1万人以上の人材育成に携わってきた筆者によると、それは「志」だという。では、志のないリーダーはどのような行動を取るのだろうか。10の行動でまとめてみた。 - リーダーにふさわしい人材がいない……それは“昇進のジレンマ”
次代を担うリーダーが出てこない、という企業の悩み。その原因の1つには、失敗を経験した人が昇進させられないという制度上の問題があるのかもしれない。 - リーダーに「カリスマ性」は不要である
リーダーに必要な能力を問うと「カリスマ性」という回答が寄せられる。その気持ちは分からないではないが、若きリーダーが「カリスマ性を身につけよう」と目指すとろくなことがない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.