コミュニケーションには常に「相手」がいることを心強く思おう:「聴き方・話し方」のコツ(2/2 ページ)
コミュニケーションとは、やりとりであり、常に「相手」がいることはとても心強い事実です。
コミュニケーションは「スキル」ではなく「やりとり」
コミュニケーションの悩み(3)
準備をして、先輩と同じように取引先にビジネスの話をした。きちんとできたと思ったけれど、取引相手から「なんだか不安だなぁ……」と言われてしまった。話している内容は同じなのに、一体どこに問題があるのだろう? どうしたら信頼してもらえるのだろうか?
こんなときも、「どうすれば信頼される話し方ができるだろうか」に目を向けてしまうと、「自分」の世界に入ってしまい、殻にこもった様子がますます相手に不安を与えてしまうかもしれません。
やはりここでも、「相手」を味方に付ける、という工夫ができます。不安を感じているのは相手なのですから、「どこが不安か教えていただけますか?」と聞いてみてよいのです。
もちろんこれは相手に対する依頼ですから、「教えてくださってありがとうございます」というお礼の言葉は必要です。その上で、「その点につきましては……」と説明していく、という順序で運ぶ必要があるでしょう。
間に「教えてくださってありがとうございます」という一言を笑顔で挟むのはとても効果的です。本来はこちらが、相手に不安を与えないようにきちんとすべきだ、という思いが相手にはあるでしょうから、それを教えたのは「プラスαの親切」です。
それに対してきちんとお礼が言える、ということは、もちろん相手に信頼感を与えますし、不安はそれだけ和らぐでしょう。いきなり「その点につきましては……」に入ってしまうと、まるで喧嘩をしているみたいな雰囲気にもなりかねません。
もしも相手の答えが「どこと言われても全体に不安」というものであれば、笑顔で、「教えていただいてありがとうございます。これからはもっと不安を感じないでいただけるように努力します!」と言えばよいでしょう。どことなく不安、というのは、信頼関係が育っていない、という意味でしょうから、そうやって前向きで誠実な姿勢を示すことが信頼関係の構築につながっていくはずです。
取引関係もそうですが、人間関係は、最初から完成されているわけではなく、育てていくもの。「何だか不安だなあ……」というのは相手から見た第一印象に過ぎません。それにうろたえたり打ちのめされてしまったりするのではなく、そこを土台に関係を育てていく、というふうに考えるとよいでしょう。それが、相手の気持ちをしっかりと受け止めるということにもなります。
「信頼される話し方」についての本などもあるようですが、信頼というのは、そもそもが「話し方」という「スキル」についての問題ではありません。人格レベルの話です。「信頼される話し方」をスキルのレベルでいくら習得しても、その姿勢が表面的なものに過ぎないと見破られれば一気に信頼は失われます。「あの人は口ばかり」などと言われるのはそういうタイプの人ですね。
なお、ここでお話ししてきた「相手を味方につける」ということは、要は、相手と人間同士でつながるということ。信頼関係はつながりの上にしか成り立たない、ということを考えれば、実に合理的なことです。
自分の不安は相手にも伝わります。緊張しながら話すと、相手は不安を感じるでしょう。しかし、話すときの緊張は、信頼関係そのものとはまた違った次元の、ありふれた現象です。「ちょっと今緊張していますが、内容は確かですのでご安心ください」などと言って話し始めれば、相手は、「ああ、人間は誰でも緊張するんだな」とつながりを感じることもできますし、どんなつもりで聴けばよいかが分かって安心するでしょう。人間としての自分の限界(話そうとすると緊張してしまう)を認めるということも、「話す力」の1つです。
コミュニケーションの悩み(4)
つい、自分のことばかり話してしまう。話したくて仕方がない。でも、周りからうっとうしく思われているようなので、直したい。
こんなときにも、助けてくれるのは「相手」。まずは、自分が自分のことばかり話してしまう、という欠点を持っていることを認め、それを相手に打ち明けるところからです。
「どうしても自分のことばかり話してしまうから、適当なところで止めて」と頼んでおけば、相手は止めやすくなるでしょう。それを失礼と感じずに済むからです。自分の力でどうにもならないことは、相手の力を借りればよいのです。これが、コミュニケーションのよい点の1つですし、間違いなく、コミュニケーション力の一部を形成するものだと言えるでしょう。最初から完成形である必要はなく、状況に応じて相手の力を引き出すのがコミュニケーションだからです。
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