「自分の領域」の中だけで話そう:「聴き方・話し方」のコツ(2/2 ページ)
私たちは本人にしか分からない「領域」をそれぞれが持っています。そして、その「領域」の概念をきちんと持っておかないと、自分が傷ついたり相手を傷つけたりしてしまいます。
「自分の領域」の中だけに留まる言葉を使おう
コミュニケーションの悩み(2)
自分の言葉が相手を傷つけてしまったと気がついたとき、どう対処すればよいのか?
最も誤解を招かないコミュニケーションは、「自分の領域」の中で、しかも率直に誠実に話すことです。
ですから、自分の言葉が相手を傷つけてしまったと気づいたら、「私は今とても失礼なことを言ってしまいました。まったく悪気はなかったのですが、言ってから不適切だったと気づきました。申し訳ございません」とそのまま謝ればよいでしょう。
「私の言葉で傷ついたでしょう」などと相手をおもんぱかるようなことを言うと、かえって嫌な思いをさせることもあります。プライドの高い人など、「自分は傷ついてなんかいない」と反発を感じる場合もあるでしょう。これは、「相手の領域」に踏み込む話ですから、不愉快な思いをさせたとしても当然ですね。
それよりも、「自分が失礼なことを言った」「不適切だったと気づいた」「申し訳ない」と、すべて自分の責任の範囲で話したほうが、人の領域に踏み込まずに済み、不愉快な思いを与えることもありません。
言葉で伝えたほうがよいとき、言葉を使わなくてもよいとき
コミュニケーションには、言葉を使ったコミュニケーション(言語的コミュニケーション)と言葉を使わないコミュニケーション(非言語的コミュニケーション)があります。
それぞれに向き・不向きがあるので、適切なほうを使ったり、両方をうまく組み合わせたりするとよいコミュニケーションができます。例えば、相手に何かを依頼するようなときには、言語的コミュニケーションを使ったほうがよいでしょう。依頼の内容が曖昧なのに伝わった気になっていると、「やってくれなかった!」という落胆に陥ってしまいがちだからです。実現可能で具体的なことを、言葉を使って伝えると、その通りにやってもらえる可能性が最も高まります。
つまり、「ずれてしまうと困ること」は、言葉を使うのが何よりなのです。それも、曖昧な言い方や間接的な言い方ではなく、直接的な言い方をすると、最も正確に伝わります。「でも、直接的な言い方をすると角が立ってしまう。だからこそ差しさわりのない表現があるのでは?」と思う人もいるかもしれません。
そんなときにイメージする「直接的な言い方」とはどんなものでしょうか。それは、相手を責めるような言い方だと思います。「あなたは○○だから困ります」などと言えば、もちろん角が立つでしょう。これは見事に「相手の領域」に立ち入るコミュニケーションだからです。問題は「領域侵害」にあるのであって、「直接的であること」に一義的な問題があるわけではありません。
「私」を主語にして、自分側の事情を話し、きちんとお願いをする、という形であれば、直接的な表現であっても、角が立つどころか、相手の共感と協力を引き出すことができるはずです。
例えば、「私は腰が悪いのでこの荷物を運んでいただけるとありがたいのですが、お願いできますか?」と言えば、自分の領域の話で済みます。腰をさすりながらため息をつき、「どうして気づいてくれないのだろう」と不愉快そうに荷物を運んでいるよりも、よほど雰囲気もよく、相手の協力も得やすいでしょう。
相手に何かを依頼するときには、差しさわりのない伝え方をするよりも、自分の領域内だけでできるだけ直接的に話したほうがはるかにうまくいくのです。
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