「分かった?」と聞けば、新人は「分かった」と答えるに決まっている:そのひとことを言う前に(2/2 ページ)
後輩に指示を出して「分かりました」と言われたのに、実際には分かっていなかったり、失敗してしまったり。こいつ、本当に言ったことを理解しているのか――そんな経験はありませんか。この“つい分かったと言ってしまう”症候群の対策を紹介します。
「分かった?」で終わらず、理解度の確認を行う
以上のことを踏まえると、教えたり、指示をしたりする際には、いくつか注意すべき点があることが分かります。まず、指示をした後は、後輩の理解度を確認することが大切です。簡単な確認の仕方をご紹介しましょう。
STEP1:相手に話を振り、確認する
先輩: 「……ということでよろしくね。ここまでで何か質問ある?」
後輩: 「うーん。そうですね。今のところ、特にはないんですけど……」
先輩: 「ちなみに、何から着手しようと思ってる?」
ここでのポイントは、相手に考える時間を与えることです。反応がないからといって「じゃ、よろしく」とすぐに話を打ち切ってしまうと、理解度の確認になりません。何かしら相手にしゃべらせる機会を作るとよいです。そして、相手が着手しようと思っていることを聞いて、誤った理解をしていないかを確認してください。
STEP2:理解がOKかNGか伝える
後輩: 「……ええと、まずはお店リストを確認して、先に予約をしたいと思います」
先輩: 「なるほど、お店の確保から始めようとしてるんだね。1点いいかな。先に参加者が出席できる日を固めてからの方が、二度手間にならなくていいよ。日程決め、お店予約の順で進めてもらってよいかな?」
正しい場合は理解が正しい旨をフィードバックし、理解ができていない場合は、後輩が言ったことを「なるほど」といったような言葉で受け止めた上で、軌道修正をしていきます。相手の言葉を受け止める言葉がないと、相手は否定されたと思ってしまうので注意してください。このほかにも、やってしまいがちな失敗例があります。威圧的に理由を聞いてしまうパターンです。
後輩: 「……ええと、まずはお店リストを確認して、先に予約をしたいと思います」
先輩: 「なんで? お店リストが先って思ったの?」
後輩: 「……(なんでって……なんで責められてんの? なんか言うと長引きそうだし、黙っておこう)」
“Why”は言い方によって、相手を責めているようにも聞こえる単語です。相手に威圧感が伝わってしまうと、相手は萎縮してしまい、場合によっては黙ってしまいます。こうなると「自分の話が伝わっていない」と思ってしまうこともあるでしょう。
こういうときは大体、後輩は自信が持てずに、先輩に対して気後れしていることを知っておくとよいです。例に出したような誤解を防ぐためにも、威圧感を与えない言い方をする必要があるのです。詳しくは、次回のコラムで説明します。
「分からないことは言ってもらった方がいい」と伝える
始めのうちは、繰り返し伝えてみてください。そして、質問してきたときには「正直に言ってもらって助かる」など、フィードバックを与えてみましょう。フィードバックにより、何がよしとされているか相手は理解できます。決して「そんなことも分からないの?」とか、「忙しいから後にして」といった反応はしないように。
もちろん、忙しい最中にじっくりと付き合うことはありません。「ごめん、忙しいから今は難しいんだけど、30分後ならちゃんと時間とれるよ。それでもいい?」と聞いてみましょう。具体的な数値を出すことと、判断を後輩に委ねることで、無下に断られた感を消すことができます。
いずれにしても、後輩が仕事に自信を持ち始めると、徐々になくなっていく類の話。そのときまで気長に構えることが一番大事なのです。
今回のまとめ
Q:後輩や部下に教えたり、指示をしたりすると「分かりました」と答えが返ってきますが、実際には分かっていないことが多いです。すぐに分かったと言う人に対して、きちんと理解させるにはどうすればよいでしょうか?
A:「分かった?」と聞けば「分かった」と答えます。「分かった?」と聞かずに、後輩の理解度を確認してみましょう。いつでも質問を受け付けることも伝えてみてください。
著者プロフィール:岩淺こまき
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
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