ボーダフォンが、2つの新機種を発表した。シャープ製の「V603SH」と東芝製の「V603T」だ。この2機種、機能的には“まさにハイエンド”。ボーダフォンならではのテレビ・FMラジオ機能に加え、V603SHでは地磁気センサー+加速度センサーの「モーションコントロールセンサー」も搭載し、機能を列挙するのも大変なほど。
しかし難しいのは、この2機種が2G(第2世代)のPDC端末であることだ。
同社プロダクトマネジメント本部ターミナルマネジメント部の森一幸部長は、「90xシリーズと双璧となる、ハイエンドライン」だと話す。
90xシリーズとは、2004年12月に、同社が満を持して投入した3G(第3世代携帯電話)端末のハイエンドライン(9月22日の記事参照)。2.4インチ液晶や光学2倍ズーム付き202万画素CCDカメラ、Bluetoothなどを備え、さらに海外でも使えるGSMとのデュアルモード端末、「902SH」が発売されている(1月7日の記事参照)。
3Gの902SHと、2GのV603SH。通信方式では902SHのほうが最新型だが、機能面ではV603SHのほうが上を行く。森氏は、「(機能の)混在は否めない」としながらも、902と603の棲み分けを次のように説明する。
「双方ハイエンドだ。902SHは、企画段階から世界共通端末だった。正直、盛り込めなかったところもある。それを盛り込んだのがV603SH。3Gの世界を体感したい人には902SH。エンターテインメントはV603」
このハイエンドのねじれ現象を見て、思い出すのがドコモの初期FOMAだ。通信方式では最新ながら、機能面ではPDCの「505iシリーズ」に劣っていたFOMA。この機能差をキャッチアップした「900iシリーズ」は、FOMA躍進のきっかけとなった。
つまり、ボーダフォンにとっての“900i”はまだこれからということだ。
「(V603シリーズの機能は)3Gにも集約していきたい。V603は過渡的な段階」と森氏が話すように、次の3Gモデルこそが、真のハイエンドモデルとなる。
現在の902・802・702といった3G端末は、Vodafoneグループにとっても3G端末の第1世代であり、次のモデルこそが主力となり得るのだろう。森氏も3G端末の大きさや消費電力について、「今年、急速に(2Gを)キャッチアップすると見ている」としており、3Gへの本格シフトは2005年以降となる。
その時期には、PDC端末も機能面を引っ張る役割を終え、「普及機、あるいは差別化したモデルになってくる」(森氏)。
しかし気になるのは端末販売面との連携だ。3G端末7機種によって、3Gへのシフトを本格的に始めるはずだった2005年。販売店でも3Gに力を入れるはずだった。
しかし海外向けと仕様を合わせた3G端末は、特に操作性が不評。「操作法が分からない」といったクレームの多さに、販売店も3G端末を勧めにくいのが現状だ。端末開発の進み具合と販売施策にズレがあったことは否めない。
主力が3Gだけでは失速する──。ほとんどの業界関係者がそう見ている中、PDCの新機種登場は朗報だ。「ハイエンドのPDCを開発しておいて助かった」。それがボーダフォンの本音であろう。
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