連載
» 2005年02月02日 08時57分 公開

眠れる獅子「モバイルFeliCa」を起こせるか? 神尾寿の時事日想:

モバイルFeliCa搭載携帯の台数、対応店舗は順調に伸びている。しかし使える端末と場所が増えても、ユーザーが利用しなければ普及はしない。モバイルFeliCaの利用率を上げるために、今後必要なことは何だろうか?

[神尾寿,ITmedia]

 矢野経済研究所が、おサイフケータイに代表される携帯電話向け非接触IC「モバイルFeliCa」市場に関する調査結果を発表した(2月1日の記事参照)。同研究所は、モバイルFeliCa搭載の携帯電話は2005年度に1680万台、2008年度には3200万台になると予測している。

 モバイルFeliCa搭載端末の普及、対応する店舗・サービスの増加という点では、今後の見通しは明るい。モバイルFeliCaは業界最大手のNTTドコモが推す機能であり、番号ポータビリティ(MNP)対策で多少手綱を緩めることがあっても、同社の「機種変更でおサイフケータイ対応端末を増やす」という方針に変わりはない。また、業界2位のKDDIがモバイルFeliCa対応を正式表明したことは、端末普及台数の上積みが見込めるだけでなく、この機能がキャリアの垣根を越えた汎用的なものになることを示唆した。「ドコモとauが対応する」という安心感から、各種店舗やサービス事業者のモバイルFeliCa対応の動きも加速している。

 新春早々、筆者はフェリカネットワークスの河内聡一社長にお会いしたのだが、その席でもモバイルFeliCaに対する注目度が話題になった。河内社長によると、未だモバイルFeliCa正式対応の表明をしていないビックプレーヤーを含めて「お会いしていない業種、企業の人はいないんじゃないかと思えるほど、注目していただいている」という。携帯電話業界はもちろんのこと、他の業界においても、モバイルFeliCaの普及は「既定路線」として認知されているようだ。

 一方で、ユーザーサイドに翻ると、モバイルFeliCaの利用率を上げられるかという大きな課題がある。対応端末と対応店舗・サービスが順調に増えても、それが日常的に使われなければ“眠れる獅子”でしかない。

 眠れる獅子を起こす役割として期待されているのが、今年後半の実現が予定されるJR東日本の「モバイルSuica」である。各種調査や筆者の一般ユーザーヒアリングでも、モバイルFeliCaを「駅で使いたい」という声は大きい。現在、カード型のSuicaは約1070万枚発行されており、非接触IC「FeliCa」最大のサービスとして稼働している。さらにSuica電子マネーは、対応する約700店舗の合計で1日平均8万件の利用がある。駅中のコンビニエンスストア「NEW DAYS」での平均利用率は10%で、利用率の高い店舗では20%を超えているという。一方、現在おサイフケータイが対応する電子マネー「Edy」は、対応する1万3000店舗の合計で1日平均約16万件の利用である。

 利用率の点を鑑みれば、モバイルSuicaを筆頭とする「駅でのモバイルFeliCaサービス」の登場が、一般ユーザーのモバイルFeliCa利用を促す“きっかけ”になるのは間違いないだろう。しかし、現在のおサイフケータイは、モバイルFeliCa対応サービスの登録やアプリのダウンロードといった手続きが煩雑で、使い勝手が悪い。モバイルSuicaなど駅での対応が始まる前に、使いやすさの部分もきちんと整備しておかないと、眠れる獅子の目覚めは悪いものになりかねない。

神尾寿

通信・ITSジャーナリスト。IT雑誌契約ライターを経て、業務委託で大手携帯電話会社のデータ通信ビジネスのコンサルティングを行う。1999年にジャーナリストとして独立。移動体通信とITSを中核に通信が関わる分野全般を、インフラからハードウェア、コンテンツ、ユーザーのニーズとカルチャーまでクロスオーバーで取材している。ジャーナリストのほか、IRICommerce and Technology社レスポンスビジネスユニットの客員研究員も努める。

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