そもそも電波って何だろう 2塩田紳二のモバイル基礎講座 第4回(2/3 ページ)

» 2005年04月19日 05時47分 公開
[塩田紳二,ITmedia]

偏波とアンテナの角度の関係

 通常、電波を送受信する場合にはアンテナ(空中線)を使います。電波は、送信するアンテナの形にも影響されます。縦に長く伸びるアンテナと横に長く伸びるアンテナでは、電波の波の形が90度ずれます。これを「偏波」といいます。アンテナを斜めにすれば、もちろん偏波も斜めになります。電波通信を行う場合には、双方で偏波を合わせたほうが、受信時により大きな信号を得ることができます。通常のアンテナは水平または垂直のどちらかなので、直接波の偏波は、水平または垂直となるわけです。

直接波の偏波は、垂直、水平、円となる

 この偏波は、パラボラアンテナなどの場合には、「円偏波」となります。これは垂直と水平の偏波が組み合わさったもので「右回り」と「左回り」があります。

 電波が反射する場合に、偏波の向きが変わってしまうことがあります。このため、前述のマルチパスでは、偏波の違う電波を受信することもありえます。

ダイバシティとは?

 マルチパスや物体の吸収などにより、どこででも良好に電波の受信が行えるとは限りません。場所によっては、反射波と直接波が弱め合い、受信信号が小さくなってしまこともありえるのです。

 例えば屋内で無線LANを使うとき、電波強度などが安定しないことがあります。これは、部屋の壁などでマルチパスが発生し、電波の強いところ、弱いところが複雑な状態で作られているためです。そして、その中で人間などがわずかに動いただけで状態が変化するのです。

 こうしたマルチパスなどの影響を少なくし、良好な受信を行うための方法として「ダイバシティ」があります。ダイバシティとは簡単にいうと、複数の電波を受信して、受信信号の品質を高める技術です。

 ダイバシティには、「空間」「偏波」「時間」「周波数」などの方法があり、送信側で行うものと受信側で行うものに分けられます。

 最も広く使われるのは、距離の離れた2つのアンテナで受信を行う「空間」ダイバシティです。距離の離れた2つのアンテナでは、マルチパスの影響が違うため、2つの受信信号のどちらか良い方、あるいは、2つの信号を合成することで受信信号の品質を改善します。こうした方式で使われるアンテナをダイバシティアンテナといいます。PDC方式では、端末側で2つのアンテナを使うことになっており、電話機には、外側から見えるアンテナ(伸び縮みするものや、突起状に飛び出しているもの)と、内部に隠れているものの2つが入っています。

 もう1つの偏波ダイバシティは、反射により偏波が変化することを利用し、水平/垂直、2種類の偏波に対応したアンテナを使って受信を行う方法です。空間ダイバシティ同様、2つのアンテナからの信号を選択、または、合成します。また、空間ダイバシティと違い、2つのアンテナの距離を離す必要はないため、機器を小型化できるというメリットもあります。

 cdmaOneのところで解説した「レーク(くまで)受信」は(3月22日の記事参照)、時間ダイバシティの1種とも考えられます。時間ダイバシティは、受信した信号の時間をずらして複数の信号を作り、それを使って信号品質を上げる方法です。

 cdmaOneでは、この時間のずれを受信信号からではなく、マルチパスによって発生した時間差を使って作っています。このため、cdmaOneではこの方式を「パス・ダイバシティ」と呼ぶようです。

 周波数ダイバシティは、2つの異なる周波数を受信して信号品質を上げる方法です。反射や吸収は周波数によって違い、また、周波数が違うと波長、周期が違うために、同じ距離を通って伝わったとしても受信地点での影響が違ってくるのです。しかし、これは、送信元が同じ情報を別々の周波数で送信していないと、利用できない方法です。

電波には型式がある

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