5月25日、フィンランドのNokiaがLinux搭載のインターネット接続端末「Nokia 770 Internet Tablet」を発表した(5月26日の記事参照)。携帯電話メーカー発のPDAライクな製品として注目している人も多いだろう。
PDAは登場からこれまで、個人情報管理(PIM)を主目的とするツールであり、PCと連携する「PCコンパニオン」というコンセプトが主流だった。日本では、ソニーのCLIEシリーズやシャープのZaurusシリーズが、独自のコンテンツ提供サービスを用意し、PDAのネットワーク/コンテンツ端末化を行おうとしたが、iモードなど携帯電話コンテンツサービスの爆発的な普及に阻まれ、それらはビジネス的に成功しなかった。ソニーはCLIEシリーズを終了し、シャープは新世代Zaurusでモバイルストレージ端末という方向性を模索している。
以前のコラムで、欧米の“PCコンパニオン”だったPDAは携帯電話と融合し、スマートフォン市場に昇華していると紹介した(2月28日の記事参照)。スマートフォンはPC連携が強化されており、今や「(欧米では)ホワイトカラーのiPod」(ボーダフォン関係者)と呼ばれるほどになっているという。また、PDA最盛期にIBMのWorkPadが模索したエンタープライズ分野での利用にも、スマートフォンは進出し始めている。
周知の通り、スマートフォンはノキアも作っており、市場での人気も高い。その中で生まれた「Nokia 770 Internet Tablet」は、PCコンパニオンではなく、“インターネットのための情報端末”だ。スマートフォンによるフルブラウザ接続や、iモードなど独自のコンテンツを利用させる日本のブラウザフォンとも異なる。できるだけ「そのまま」の状態のインターネットサービスやコンテンツを利用させようとしている。ITMediaのニュース記事ではPDAと書かれているが、ノキア自身はPDAという言葉は使っていない。筆者も、これは従来のPDAの発展系ではなく、新しいカテゴリーの創造を目指した野心的な製品だと思う。
Nokia 770 Internet Tabletは、PC、携帯電話に並ぶ、第3のネット端末になろうとしている。従来のPDAのようにPCを補完するものではない。あえて位置づけるなら、スマートフォンと補完関係にあると言えるだろう。ここに携帯電話メーカーであるノキアの素顔が垣間見える。
日本では、スマートフォン市場そのものがまだ立ち上がっていない。しかし、イー・モバイルなど新規参入組が積極的にスマートフォンを投入する予定であり、既存キャリアも法人市場にはスマートフォンを導入する。欧米のビジネス/ビジネスコンシューマー市場でNokia 770 Internet Tabletがどのように受け入れられるか、注目しておいて損はないだろう。
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