日米のモバイルアクセス環境、どこが違う? Interview(2/3 ページ)

» 2005年06月29日 17時56分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

日本の公衆無線LANは使いにくい?

 米国に遅れること約1年、日本では2002年頃から公衆無線LANサービスが始まった。しかし米国に比べると日本では公衆無線LANの普及が遅く、この頃と今とを比較しても公衆無線LANを利用するユーザーはあまり増えていないという。「PHSによるデータ通信が普及している半面、公衆無線LANなど、無線LANのモバイル利用を受け入れるのが日本は遅かった」(菊地氏)

 外国と比較して、日本の公衆無線LANには使いにくい点があるのだろうか? 最も大きな理由として菊地氏が挙げるのが“日本の公衆無線LANスポットではWEPキーが必須”という点だ。日本ではサービスを提供する事業者がWEPキーを使うように指導されているため、ほとんどの公衆無線LANスポットでWEPキーを入力しなくてはならないが、世界的にはこれは特殊な例だという。

 もう1つ、日本の特殊性として菊地氏が指摘するのが“日本の場合、モバイルアクセスには、労務協定の問題がからんでくる”という点。「公衆無線LANや、家のADSL回線から会社にアクセスすることを、日本の企業の情報システム部は好まないことが多い。自宅で仕事をした分を残業にするのか、ボランタリーとしてカウントするのか、それが問題になるのが日本の企業。外資系の会社では問題にもならないし、実際米国人にいくら説明しても、この話はまったくピンとこないようだ」

「ワイヤレスには手間がかかる」

 iPassのサービスを一言で表現するなら「企業向けのセキュアなリモートアクセス」ということになるだろう。顧客は主に法人ユーザーだ。iPassがユーザーに提供しているソフトが、「iPass Connect Dialer」。携帯やPHSのデータカードでも、公衆無線LANからでも、同じような使い勝手でセキュアに社内LANにアクセスするためのクライアントソフトである(2004年11月15日の記事参照)

iPass Connect Dialer(画面はトライアル版)。一覧表示されたアクセスポイントの中から、自分がいる場所に近いものを選んでログインする。PHSでも公衆無線LANスポットでも、同じIDとパスワードでログインできるので使いやすい。必要であればVPNを張ってアクセスできる

 「ワイヤレスには手間がかかる」と菊地氏は言う。PHSや3Gデータカード、公衆無線LANなど、モバイルユーザーのアクセス手段は多様化している。「さまざまなアクセス手段に対応し、いかにセキュリティを守っていくかが、最大のテーマ。セキュリティは何より大切だし、やってもやっても『これで終わり』と思えることがない」

新しいユーザー認証の方法を探る

 最近ではiPassの提供するサービスのうち、モバイルアクセスの部分だけではなく、ユーザー認証技術に注目している企業も出てきている。iPassでは、Radiusサーバに依存しないユーザー認証方法を採用しているためだ。

 現在、iPassが新しく取り組んでいるユーザー認証の方法は以下の2つだ。

 1つは、CPUやHDDなど、PCのデバイスIDを利用した「デバイスID」と呼ばれるマシン認証方法で、「ダイナミック・フィンガープリンティング」という技術が使われている。あらかじめクライアントPCのデバイスIDをデータベースに登録しておき、ランダムにIDをスキャンして、会社のマシンかどうかを特定する。ユーザーは特定できないが、マシン自体の安全性を保つために利用される。

 もう1つは、EPM(End Point to Policy Management)と呼ばれる認証方法だ。クライアントPCのSecureパッチの適用状況をチェックし、常にセキュリティポリシーを満たすように管理するツールとしてはTIVORIなどが有名だが、LANにつながっているデスクトップPC向けのツールが多く、リモートアクセスに適したツールは少なかった。そこでiPassではシャブリック・テクノロジーズのチェックツールを購入、この技術をコアにしてEPMを開発、商品化を進めている。現在、パイロットで50社くらいの企業がテスト運用中だという。

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