FeliCaでピッ!──札幌大学の出欠席システム (2/2 ページ)

» 2005年07月02日 11時52分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]
前のページへ 1|2       

携帯の可能性に着目

 大森教授が“非接触チップ”と並び、もう1つ着目していたポイントが“携帯電話”だ。理由は「携帯を貸しっぱなしにすることはまずないので、代返の心配もありません。また遅刻した学生に理由を聞くと『携帯を忘れて取りに戻った』と答える子が多いくらいで、まず忘れないものですから」(大森教授)。日立製作所との実証実験以前には、学生の携帯番号を受信して出欠を取る、RFICタグでストラップを作り、携帯に付けて学生に持たせる、などのアイデアもあったという。

 電子マネーとの連携も考えている。学生証に載せるのをICタグにするかFeliCaにするかについては最後まで迷っていたが、決め手となったのが「札幌シティカード」がFeliCaチップを搭載していたことだったという。札幌シティカードは、札幌市の一部店舗で電子マネーが利用できるポイントカードで、札幌市で実証実験が行われている。札幌大学の学生証は札幌シティカードと連携しており、対応店舗では秋頃から、学生証を使って電子マネーで買い物ができるようになる予定だ。「電子マネー機能が付けば、貸し借りしなくなります。交通、決済とリンクできるのはFeliCaの大きな強み」

FeliCaチップが埋め込まれた札幌大学の学生証。裏には札幌シティカードとしても使える旨が書かれている

導入後、出席率が1割アップ

 大学全体での結果をまとめるのは前期が終わってからになるが、大森教授の受け持つ講義では、目下平均して約1割程度出席率がアップした。また、「誰が出ているか」が簡単に把握できるので、就職指導などの課外講座でも効果が上がっているという。

 不具合が起きても、すぐに分かる点もメリットだ。マークシート式の出席票を利用していたときは、前期・後期が終わるごとに講座ごとの出席をまとめて教員に渡していたが、このシステムでは教員も学生もWebページにアクセスするだけで、リアルタイムに出欠状況が分かる。また、自分の受け持つ講座以外の出欠状況を見られるようになり、学生の指導にも役立つ。

 学生側にも好評なようだ。リーダーライターが学生証を読み取ると「ピッ」と電子音がするため、出席を申請することを学生たちは「ピッする」と呼んでいる。「“出席を取るんだから行かなくちゃいけない”と思うらしく、学生も楽しんでいるようだ。夏休みのラジオ体操で、マルをためるような意識なのかもしれない」(大森教授)

 変化が起きたのは学生だけではない。教員側も「遅れてはいけない」という意識が高まり、講義開始が遅れることが減る、思わぬ相乗効果もあった。

面白かったのが、学生にも好評という点。取材中も「今日、ピッした?」「あっ、ピッの取材してる!」という会話が聞こえてきた(左)。ICカードリーダーで学生証を読み取らせるよう、各教室のそばに張り紙がしてある。授業開始10分前から受け付ける(右)

満足度は100点満点

 「満足度は100点満点」と大森教授は話す。「教員の手をわずらわせないところが良かったのでしょう。『出席率が上がった』『それでも代返している生徒がいる』など教員の意見はいろいろですが、全体としては満足していると言えると思います」

 目下の検討課題が「“遅刻”を作るかどうか」。現在のシステムでは、一定時間を過ぎると出席扱いにならないのだが「何分遅れまでを遅刻とみなすか、教員間の合意がとれたら導入したい」

 また、現在出欠を取れるのは学生証だけだが、将来的にはFeliCaチップを搭載した携帯電話なども使えるようにしていく計画だ。「IDm(注:FeliCaチップのID)を学生の情報とひも付けて管理しているので、別にカードでなくてもいいわけです。将来的には、FeliCaを搭載した携帯や、FeliCaが入ったクレジットカードなどでもいいということにしていきたい」

 現在は入室時のみしか学生証の読み取りを行っていないが、退室時にも読み取りをする計画もあるという。教員にとっては“何時に講義を始めて何時に終わったか”が一目で大学に分かってしまうこともありまだ未定だが、「生徒にも教員にも、両方に緊張感が生まれるからいいでしょう」と、大森教授は笑った。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.