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» 2005年07月27日 16時34分 公開

ビジネス市場へのアプローチを強めるボーダフォン 神尾寿の時事日想:

J-フォン時代に比べ、ビジネス市場を積極的に狙う姿勢を見せるボーダフォン。ビジネス市場に強いドコモのトップシェアを切り崩すために、ボーダフォンが打ち出している方針とは?

[神尾寿,ITmedia]

 7月26日、ボーダフォンがコンパクトフラッシュ型の3Gデータ通信カード「VC701SI」のバージョンアップを発表。9月上旬より、海外のW-CDMAローミングにも対応すると発表した(7月26日の記事参照)

 周知の通り、海外には日本のPHSのように広い範囲で使える安価なPC向けのモバイル通信サービスがない。PCユーザーのモバイル通信環境は、iPassのような公衆無線LANアクセスをホテルや空港、カフェで利用するか、携帯電話ベースのデータ通信カードを利用することになる(6月29日の記事参照)。今回、ボーダフォンが発表した3Gデータ通信カードの国際ローミングは国内初であるが、ボーダフォン本社のある英国など「欧州ではすでに始まっているサービスを日本に導入したもの」(ボーダフォン広報部)だという。

 ボーダフォンは以前から音声端末の国際ローミングに力を入れており、それをデータ通信カードにも広げた。これが今回の発表の表面的な事実である。しかし、筆者はその背景に、ボーダフォンの「ビジネス市場へのアプローチ」が本格化してきた事を感じる。

 実は以前から、筆者は多くのボーダフォン関係者から「大きなターゲットはビジネス層」だと聞かされていた。コンシューマー市場を軽視するわけではない。だが、これまでのJ-フォン時代との大きな違いがあるとすれば、それは“ビジネス市場を積極的に狙うこと”だという。むろん、その時のライバルは、ビジネス利用層の厚いドコモのシェアである。

「ビジネス層はハイエンド」という戦略か?

 ボーダフォンのビジネス市場向けのアプローチで特徴的なのが、同社が個人契約・ビジネス利用のビジネスコンシューマー層よりも、法人契約・ビジネス利用の法人契約層の獲得に積極的な点だ。ライバルよりも導入が容易なモバイルセントレックスサービスを投入し、より高度なモバイルITソリューション提供の体制を整えているのは、その端緒だろう(2004年12月18日の記事参照)。今回の3Gデータ通信カードの国際ローミングも、コンシューマー層やビジネスコンシューマー層も利用できるものではあるが、海外での利用料金を考えると、ターゲットは法人契約で使う企業のホワイトカラーだ。

 ライバルのドコモはビジネスコンシューマーから法人契約層までユーザーの裾野が広いが、規模で劣るボーダフォンは「選択と集中」をする必要がある。そのターゲットが法人契約層で、その中でもハイエンド層のニーズを積極的に開拓していく戦略のようだ。これなら利用者数の規模が小さくとも、音声・データの両方で国際ローミングが提供されるメリットが出てくる。(注:ドコモは公衆無線LANサービス「Mzone」においてiPassなどと国際ローミング関係にある)

 ボーダフォンは未だ3G移行期の苦しみと混乱の中にある。さらに同社はJ-フォン時代からボーダフォンに変わる上で、ブランドとターゲット市場の転換を行っている。これらのマイナス効果が純増数の不振につながっている面は否定できない。

 だが、水面下で同社はビジネス市場へのアプローチを強めている。この結果がどう出るかはまだわからないが、3G移行期を乗り越え、ボーダフォンが再び成長軌道に乗った時に顕在化する重要な伏線であることは間違いないだろう。

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