伊予鉄道はなぜ、「FeliCa採用」に踏み切ったのか(後編)神尾寿の時事日想(1/3 ページ)

» 2005年08月31日 17時03分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 全国でもいち早くおサイフケータイに対応し、電車・路面電車・バス・タクシーという複数の交通手段を1つの電子決済システムに統合した伊予鉄道(8月24日の記事参照)。同社は将来に向けて、どのようなビジョンを描いているのだろうか。

 後編となる今日も、昨日に引き続き、e-カード常務取締役である西野元氏へのインタビューをお届けする。

e-カード常務取締役の西野元氏

おサイフケータイ対応は当初からの計画

 伊予鉄のい〜カードは、FeliCaカード型のサービスはもちろん、サービス開始時からドコモのおサイフケータイに対応した(モバイルい〜カード)。これは“全国初”の試みだ。

 「平成16年にICい〜カードの実証試験を行ったのですが、この時、約40台のおサイフケータイをNTTドコモ四国にご提供いただいた。おサイフケータイに関しては、携帯電話キャリアが今後、積極的に展開する分野だという認識も、(当時から)持っていた」と西野氏は言う。「電車・バスなど公共交通では、若者の利用が減っているという課題があった。幅広い層のお客様に(電車・バスを)使ってもらうためには、おサイフケータイ対応が必要ではないか。そう考えまして、サービス開始当初からおサイフケータイ対応にした」

 伊予鉄としては、FeliCaカード型の「ICい〜カード」と、おサイフケータイ型の「モバイルい〜カード」の利用比率について明確な数値目標は持っていない。しかし、インタビューを行ったサービス開始初日においても、「(モバイルい〜カードの)アプリダウンロード数が当初の予想を大きく超えている。窓口での問い合わせもあり、我々の予想以上にニーズがあったのかもしれない」(西野氏)。実際に松山市を散策した時も、サービス開始初日にもかかわらず、おサイフケータイをかざす利用者を何度か目撃した。

 現在、モバイルい〜カードのサービスは、プリペイドでの電車・路面電車・バス・タクシーの利用のみ。これはICい〜カードと同等で、携帯電話ならではの要素は少ない。今後、おサイフケータイならではの機能開発を行うのだろうか。

 「まずはCRM的な要素が考えられる。伊予鉄道が主体になって(ICカード事業会社の)eカードが設立されたが、出資会社の中には地元金融機関やクレジットカード会社、NTTドコモ四国などが入っている。(い〜カードは)伊予鉄道の交通部門からスタートしたが、次はグループ内の流通・飲食・レジャー部門での電子マネー対応、地元の商店街や観光地との連携も視野に入っている。この中でマーケティングから販売までシームレスに繋いでいく、という流れが出てくるだろう」(西野氏)

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.