伊予鉄道はなぜ、「FeliCa採用」に踏み切ったのか(後編)神尾寿の時事日想(2/3 ページ)

» 2005年08月31日 17時03分 公開
[神尾寿,ITmedia]

電子マネーとしての展開

 伊予鉄のい〜カードでは、Edyのように全国的にメジャーな電子マネーは搭載していない。実はい〜カードにチャージするバリューは「交通回数乗車券」という扱いではなく、「電子マネー」として扱われている。これは電車・バスだけでなく、タクシーでも利用できるためだ。今後、店舗側がい〜カード決済に対応すれば、いわゆる「電子マネー」的な利用シーンが成立する。

 い〜カード電子マネーの普及については、いよてつ高島屋など伊予鉄グループの販売店事業を先駆けに、地元経済を巻き込んだ「地域通貨的に使えるものを考えている」(西野氏)という。そうなれば、通信機能を持ち、CRMでの発展性があるおサイフケータイの可能性は大きい。

 また、モバイルい〜カードの機能拡張は、電子マネーやCRM以外にも行われる見込みだ。

 「近日中の実現に向けて準備をしているのが、オンラインチャージ機能の実装。クレジットカードからのチャージはもちろん、銀行や郵貯などの対応も検討している。他にも、現在実現していないものとして定期券機能がある。こちらは技術的な取り組みがさらに必要なので少し時間がかかりそうだが、将来的には是非とも実現したい」(西野氏)

開放的でコストも安いゲートレス改札機

 い〜カード事業は全国的に見ても先進的かつ意欲的なものだが、一方でコスト削減にも腐心している。例えば、先のレポートで筆者が好感を覚えた「ゲートレスのICい〜カード専用改札機」もそうだ。

 「ゲートがないのは地方だからか、という議論はあるかもしれないが、本当に先進的な公共交通には『改札にバリアーがない』ことを知っていただきたい。チケットキャンセラー方式といい、欧州や米国の一部都市で導入されている、お客様を信頼する方式。ただ、これを大都市圏の駅で導入するとオペレーションが大変だろうから、松山市くらいの規模から導入するのがいいのかもしれない」(西野氏)

 伊予鉄のICい〜カード専用改札機はゲートをなくして小型化し、FeliCaのタッチ面や液晶画面を大型化。分かりやすく、開放的なイメージになるようデザインや効果音にはこだわったという。さらに、この改札機は“コスト削減”にも貢献している。

 「今回のICい〜カード専用改札機は、一般的なゲート式(FeliCa)改札機に比べて、数分の1のコストで設置できる。(切符や磁気式カードの読み取り部やゲート開閉機構など)駆動部がないので、メンテナンスなど維持費も安くなる。これらは地方の鉄道会社が導入する上で、重要な部分」(西野氏)

ゲートのないICい〜カード専用改札機(左)と、ゲート付きの改札(右)

 またこれは帰京してから知ったのだが、JR東日本でも一部の小規模な駅に、FeliCaリーダーライターのみの「簡易型Suica端末」を設置している。地方のJRや私鉄が非接触ICの改札機を導入する際に、必ず問題になるのが、「利用客が少ない駅に導入する必要性と採算性」という部分であるが、今回のICい〜カード専用改札機や簡易型Suica端末は、その解決策になるかもしれない。

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