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» 2005年09月12日 10時36分 公開

シャープ好調に見る、端末メーカーにとってのMNP 神尾寿の時事日想:

ナンバーポータビリティ(MNP)で影響を受けるのは、キャリアだけでない。端末メーカーはどのようにうまくMNPを乗り切るべきか? シャープはその好例といえる。

[神尾寿,ITmedia]

 9月5日、IDC Japanが2005年第2四半期の携帯電話出荷台数と、2005年後半の見通しについて発表した。この中で筆者が特に注目したのが、シャープの動きである。

 IDC Japanのレポートによると、第1四半期にメーカー別シェアで首位となっていたNECは3位が転落、パナソニックモバイルが首位を取る一方で、シャープが2位に浮上した。

 これまで国内の携帯電話端末シェアは、NECとパナソニックモバイルの「2強体制」が続いていたが、2004年からシャープが躍進。「2強のどちらかが不振ならば、2位に浮上する」という構図が生まれていた。

 IDC Japanのレポートにもあるとおり、シャープ躍進の要因は、NTTドコモとボーダフォンの両方に端末を供給し、どちらも好調なことだ。以前からトップシェアを維持するボーダフォン向けはもちろん、ドコモ向けでもハイエンド分野で大きなシェアを獲得している。また、2キャリアにまたがることで、キャリアの好不調やユーザーの流動による影響を分散・回避している。これがシャープの堅調な強さにつながっている。

MNPで重要な「複数キャリア」供給

 シャープの舵取りは、MNPを前にする端末メーカーにとって模範的なものである。

 ユーザーの流動性を高めるMNPは一時的に市場全体の端末需要を拡大するが、一方で端末メーカーにとっては、主要供給キャリアの浮沈や、ユーザー流動に伴う既存ユーザーの喪失リスクという影響があるからだ。

 最近のシャープの動きをMNPの先行事例とすると分かりやすい。同社は絶妙なタイミングで「ドコモへの端末供給」を本格化したおかげで、ボーダフォンの3G立ち後れ・一時的な苦境の影響を直接受けずにすんだ。さらにボーダフォンからドコモに移動するユーザーの多くを、引き続き「シャープブランド」として獲得することに成功している。これをドコモで新たに獲得したユーザーと合わせる事により、ドコモ内での端末シェアを伸ばした一面はあるだろう。

 MNPの時点では、少なからぬユーザーがキャリアを変える。その中で、1キャリアへの依存度が高すぎる端末メーカーは、キャリアの浮沈の影響を受けてしまう。

 さらに重要なのが、ユーザーがキャリアを変えた時に、その先に自社ブランドの端末がなければ、そのユーザーは別の端末メーカーに乗り換えてしまう事だ。「キャリア変更=端末メーカー変更」という図式になれば、端末メーカーは既存ユーザーを喪失するリスクを突きつけられる。1キャリアへの依存度が高い端末メーカーほど、MNPの影響を受けやすくなる。

 シャープ以外にも、MNPを前に「複数キャリア」供給を強化し、ユーザー流動対策を進める端末メーカーがある。

 例えばソニーエリクソンは、現在3キャリアへの端末供給体制を取っているが、特にドコモとau向けはUIにこだわりつつも、基本的な部分は共通化していく方針だという。これはキャリア変更をしても、「ソニーエリクソンの端末としては使い勝手で戸惑わないようにするため」だ。他にも三洋電機が6年ぶりにドコモ向け端末を開発して話題になったが、この背景にも複数キャリア供給体制の必要性があるだろう。

 日本市場はこれまで、キャリアと端末メーカーの結びつきが強く、かつての「電電ファミリー」(電電公社と、公社が指定した特定メーカー)の様相を呈していた。しかしMNPを前に、キャリアはメーカーに「コスト削減」を強く求めるようになり、両者の間には緊張感が生まれてきている。端末メーカーが自らをブランド化し、複数キャリアの間でうまく立ち回る。そのような“如才なさ”が、MNPを前に求められている。

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