11月21日、本田技研工業が同社のテレマティクス「インターナビ・プレミアムクラブ」向けにウィルコムの専用データ通信カードを採用すると発表した。同日、ウィルコムは専用のデータ通信カードと料金プラン「カーナビ専用定額サービス for internavi Premium Club」を発表している(11月21日の記事参照)。
本田技研工業インターナビ推進室室長の今井武氏によると、今回ウィルコムが採用された背景には、ウィルコムの車載市場に対する積極的な姿勢があったようだ。
「以前から(インターナビ向けに)定額制をやりたかったのですが、その際に既存のインターナビ端末が装備しているPCMCIAカードスロットを活用したかった。携帯電話キャリアも検討しましたが、ウィルコムは車載を前提にして、インターナビ専用の通信カードと料金プランを提案してくれたのです」(今井氏)
今回のインターナビ向け端末で注目なのが、「クルマ向けにアンテナを改良していること」と「車載向けながら価格が安いこと」だ。
特に後者は重要である。携帯電話キャリアが用意する車載通信モジュールの価格は3万円以上、高いものは6万円を超える。ウィルコムの端末価格8400円は“破格”のプライスタグであるからだ。さらに今回の端末が汎用的なPCMCIAカード型である点は、今後、他の純正や市販カーナビでの採用を狙う上で有利に働くだろう。
テレマティクスの発達に伴い、クルマ向けの通信モジュールは今後、成長が期待される分野である。フローティング/プローブカーをはじめとする渋滞関連サービスの高度化やセーフティ&セキュリティサービスなど、クルマ側の「モバイル通信」に対するニーズは高まっている。特にテレマティクスを推進・充実させている純正カーナビ市場ではこの傾向が顕著だ。
すでにトヨタ自動車がテレマティクス「G-BOOK/G-BOOK ALPHA」と、レクサス向けの「G-LINK」でKDDI製の通信モジュールを採用している(4月14日の記事参照)。レクサスに関しては標準装備にしている。日産自動車は今のところBluetooth携帯電話との連携に注力しているが、来年初頭に神奈川県で予定されている社会実験「Sky Project」では通信モジュールを使用し、「通信料金込みのプランで(普及)価格帯や採算モデルを検討する」(日産自動車担当者)模様だ。今回、ホンダがウィルコムと手を組んだことで、国内自動車大手3メーカーが揃って「通信機能内蔵」の方向を向いたことになる。
車載通信モジュール分野ではこれまで、トヨタやいすゞに採用実績を持つKDDIと、バスロケーションなどで採用例の多いNTTドコモが市場を分け合っていた。しかし、自動車メーカーは特定のキャリアのみと手を組む考えではなく、「あくまでサプライヤーの1つ。選択肢が増えることは望ましい。複数のキャリアが参入すれば、利用料金などでユーザーが(サービスを)選べるようになる」(自動車メーカー幹部)というスタンスだ。
ウィルコムはPHSキャリアである点から、これまで自動車分野への進出が遅れていたが、今回の“ホンダ採用”は今後につながる実績になるだろう。将来的には新規参入キャリアも自動車分野に目を向けると思うが、その前に車載通信の選択肢が増えたことは、市場の活性化につながるだろう。今後の競争激化により、クルマが採用しやすいモジュールや料金プランが増えることに期待したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング