実際の通信システムでは、通信データ以外に制御用の信号など、複数の信号を同時に送る必要があります。このため、CDMA方式では、拡散変調を2段階に行い複数の信号を単一のCDMA信号に変換して通信を行います(図)。このやり方は、W-CDMAもcdma2000も同じです。
このとき、W-CDMAでは、個々のチャンネルを拡散変調する拡散コードをチャンネライゼーションコード、全体を拡散変調する拡散コードをスクランブルコードと呼びます。また、このときの各チャンネルを物理チャンネルといいます。物理チャンネルは、上り、下り方向で個別(もともと周波数が違うため)に、さまざまな信号を伝達するもので、方式によりチャンネル数などに違いがあります。実際には、1つのチャンネルの中に複数の信号(論理チャンネル)が含まれることもあります。また、各チャンネルの拡散コードは、あらかじめ決まっている場合もあれば、その場で割り当てる場合もあります。
W-CDMAもcdma2000、cdmaOneも、端末から基地局(上り)と基地局から端末(下り)には、別々の周波数帯を割り当てます。このため、上りと下りの信号はお互いに影響はありませんが、上り同士、下り同士の信号は同じ周波数帯なので、お互いに影響があります。具体的には、同じ通信方式であっても、違う通信は、お互いにノイズにしかならず、受信に影響を与えてしまうのです。
上りの場合、基地局は、エリアとその近辺にある端末からの信号が受信されてしまいます。前回解説したセクタ方式は、アンテナに指向性を持たせることで無関係な方向にある端末からの電波を受信しないようにする方法です。
下りの場合、端末には、複数の基地局からの信号が到達します。ハンドオーバーする場合を除いて、やはり無関係な基地局からの信号は、ノイズにしかなりません。なお、以前解説したRAKE受信は、同一の基地局から端末に向けられた信号を複数受信して信号品質を上げる方式であり、無関係な基地局からの通信はやはりノイズにしかなりません。
次回は、W-CDMAの通信についてもう少し詳しく解説する予定です。
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