DCMXは、EdyともSuicaとも共存する――NTTドコモ夏野氏に聞く(後編) Interview(1/3 ページ)

» 2006年05月09日 13時25分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 NTTドコモがイシュアとして始めたクレジット決済サービス「DCMX mini / DCMX」(4月4日の記事参照)前編では、これがドコモのおサイフケータイビジネスのコアであり、DCMXによって“iモードの次”となる新たなビジネスモデルが完成した点が明かされた。

 後編でも引き続き、NTTドコモ プロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部の夏野剛氏に、DCMXのインパクトやドコモの戦略について聞いていく。

NTTドコモ プロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部の夏野剛氏

DCMX mini / DCMX、加盟店獲得へのインパクト

 ドコモ自身がイシュアとなることで、DCMXは他のクレジット決済サービスよりも有利な立場で顧客獲得をすることができる。DCMX mini / DCMXは簡単な操作でオンライン入会が可能なほか、全国1400カ所のドコモショップ網が「対面窓口」としてフル活用できることも他のクレジットカード会社にない強みだ(4月5日の記事参照)

 そして、この顧客獲得の優位性は、iD加盟店の獲得においても大きな意味を持つという。

 「まずクレジット決済ユーザーのボリュームが(他のクレジットカード会社と)変わります。例えば、DCMX miniだけで見ても、1万円の与信を(現在のおサイフケータイユーザー数である)1200万人にするわけですから、単純計算で月間1200億円、年間1兆4400億円の新しい与信枠が誕生することになります。これはiD加盟店にとって大きな意味を持つ数字です」(夏野氏)

 もちろん、おサイフケータイユーザーすべてがDCMX mini / DCMXを使うとは限らない。4月28日のドコモ中村維夫社長の決算説明会では、「今後3〜5年のうちにDCMX会員1000万人獲得」という現実的な目標が表明された。だが、今後は「ドコモのおサイフケータイユーザー=DCMXの潜在顧客」になるため、ポテンシャルとしての力が大きいのは、夏野氏が強調する通りだ。

 「iDの視点では三井住友カードやUCカード、クレディセゾンのお客様もいるわけですから、そこにDCMX mini / DCMXが加わる。(iD陣営全体にもたらすDCMXの)影響は大きい」(夏野氏)

 DCMX発表のあった4月4日前後に、iD採用を表明する事業者が相次いだが(4月7日の記事参照)、DCMXがiDの加盟店増加の強い追い風になっていることは、潜在市場の大きさを考えれば「当然のこと」(夏野氏)だという。

 「おそらくクレジットカード業界の方々が驚いているのが、iD導入決定台数の32万台という数字ですよ。検討や目標ではなく、各加盟店さんで導入『決定』した数字が32万台。(JCBやUFJニコスなど)他社さんは、決定台数だと数万台といった世界でしょう? しかもね、この32万台という数字は少し控えめに算出しているんです。iD陣営は(QUICPayなど他方式を)圧倒していますよ」(夏野氏)

 また、もう1つ興味深いのが、iDが2006年内に掲げる設置予定台数が約10万台、2006“年度内”の設置予定台数が約15万台という数字だ。今年12月以降、3ヶ月でiD設置台数が5万台も増える予定になっている。リーダー/ライターの設置には店舗側の準備が欠かせないが、今年後半以降、そのペースが上がってくることをこの数字は示唆している。

 「iD加盟店の展開に関しては地域差や各事業者の事情がありますが、我々としてはJR東日本のSuica(特集参照)のように利用率の高いエリアから集中的に展開し、その上で台数の面でも増やしていきたいと考えています。今年の秋冬商戦の頃にはいろいろなところでiDのステッカーを見かけるようになり、今年度内に約15万台が設置されればかなり定着したと感じていただけるでしょう」(夏野氏)

 今年の秋冬商戦といえば、番号ポータビリティの影響で新端末の販売が大きく伸びると見込まれる時期でもある。おサイフケータイの利用者も増えるだろう。その点でも、iD加盟店増加とDCMXの相乗効果に期待できそうだ。

 iDはDCMX mini / DCMXの登場により、ユーザー層が幅広くなり、潜在的なボリュームは桁違いに膨らんだ。流通系を中心とした事業者にとって、そのインパクトはかなり大きいと言えるだろう。

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