孫氏が「Vodafoneと提携」で描くシナリオ(1/2 ページ)

» 2006年05月18日 18時01分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 ソフトバンクは5月18日、ボーダフォンの夏モデルを発表するとともに(5月18日の記事参照)、英Vodafoneと合弁会社の設立を含む戦略提携を結ぶことで正式合意したと発表した。共同で携帯端末の開発、調達を手がけるほか、基盤ソフトウェアの開発や、コンテンツの共同調達・配信を行う予定。

Photo 握手する両社代表。左から、英Vodafoneのウィリアム・モロー氏、ソフトバンクの孫正義社長、Vodafoneのアルン・サリーンCEO

 合弁会社の資本金は最大110億円で、ソフトバンクグループとVodafoneグループが50%ずつ出資する。取締役は両グループから4人ずつ派遣される予定で、これにはソフトバンクの孫正義社長や「アルン・サリーン氏、ウィリアム・モロー氏といったVodafone側のトップ経営陣も含まれる」(孫氏)という。

Vodafoneとの提携で生じる「端末ボリューム」のメリット

 設立目的の1つが端末を共同開発、調達するということだ。孫氏は「すべての端末ということではないが、“戦略的機種”について一緒に共同開発しようということ」と話す。開発した端末はソフトバンクのユーザー向けに提供するだけでなく、Vodafoneグループのパートナー企業にも提案、提供していく考えだ。

 背景には、ボーダフォンの国内シェアが現状3位に甘んじているという状況がある。「NTTドコモやKDDIと比べると、契約者数が少ない。(メーカーは)端末が十分な数が出せるのか、と思うかもしれないが、世界のVodafoneグループを足すとトータルでは一番多くなる。ボリューム感ではけして負けない」。開発メーカーに、世界の通信事業者に端末供給できる……というメリットをアピールしていく考えだ。

 端末の取り扱い数量を上げることで、1端末あたりのコストを抑えられるというメリットも発生する。会場からは「次の決算に影響する程度のコストカットが見込めるのか」との質問も飛んだが、さすがにここまで早期に効果が現れることはないようだ。「経営とは、次の四半期を考えることも大切だが、3年後、5年後、10年後を戦略的に考えるのが大切」(同氏)。将来を見据えた動きだと説明した。

 なお、孫氏のいう“戦略的機種”というのが具体的に何を指すのかは明かされなかったが、「フラッグシップモデルを開発したり仕入れたりする」という表現も使っており、ハイエンドモデルを中心に共同開発すると見られる。

マルチメディアコンテンツのプラットフォーム作りも

 2つ目の目的は、「携帯のサービスプラットフォーム・基盤ソフトウェアを作る」ということ。これはやや抽象的で意味をとらえにくい。サービスプラットフォームとは「携帯向けポータルサイト」で、基盤ソフトウェアとはOSなどではなく「ミドルウェアのところを共同開発する」(孫氏)ということのようだ。「詳細は言えないが、戦略的な新しい体系のありかたを準備中だ」

 携帯向けポータルでは、マルチメディアサービスの提供がウリになる見込み。ソフトバンクは世界で唯一、日本中に完全なIPバックボーンのネットワークを構築しているとうたっており、リッチコンテンツを扱える。「携帯業界はこれまで音声サービスを中心とした事業だったが、これから先は音声よりもデジタルコンテンツが重要。ゲームだとか動画、音楽、ニュース、さまざまなコンテンツが収入を考える際に大事になる。競合他社との差別化としても重要で、それを共同開発しようということ」

Photo 英VodafoneのCEO、アルン・サリーン氏。ソフトバンクと提携関係を結ぶのは「自然なこと」だと話す。「(ブロードバンドに強いソフトバンクとの提携で)インスタントメッセージやVoIP、エンターテインメントなど多様なサービスを提供する」

 ミドルウェアの部分は、端末開発にあたり仕様を共通化する……というイメージのようだ。「Windows OSがない時代は、国ごとにPCを販売していた。しかしWindowsが登場したことで、PC関係者は海外市場に参入しやすくなった。(共同開発するミドルウェアが)デファクトスタンダードになれば、日本の端末メーカーも海外に進出するチャンスをつかめる」

  もっとも、世界共通仕様の端末と聞くと、ボーダフォンユーザーは拒否反応を示すかもしれない。

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