ビジネスシーンにおいて携帯電話が当たり前のように使われる現在、電話機の紛失や盗難による顧客情報の漏えいが大きな問題として浮上している。特にアドレス帳のデータを中心に、発信履歴、着信履歴などの取り扱いも重要だ。究極の対策としては、携帯電話にいかなる情報も残しておかないことも考えられる。
富士通の提案するセキュア電話帳は、社内に設置したアドレス帳サーバに携帯電話からアクセスするもので、電話機本体にはアドレス帳のデータをいっさい置かないというもの。万が一、電話機を紛失しても、情報漏えいによる実害が出ないというのが最大のポイントとなる。
携帯電話からアドレス帳サーバへのアクセスには、ウェブブラウザを使う方法と、専用のアプリを起動する方法がある。いずれにせよ、サーバにアクセスすることで、携帯電話の画面に利用したい顧客情報の一覧が表示される。
ここで、一覧から任意の顧客データをクリックすると、その時点で社内のSIPサーバから自分の携帯電話に電話がかかってくる。この回線がつながった時点で、今度はSIPサーバが顧客の電話番号に電話をかけ、この2つの回線を接続する。つまり、SIPサーバを経由する形で自分と顧客との間の通話が成立するわけだ。
この方法を使うメリットは、携帯電話の発信履歴に何もデータが残らないということ。そして着信履歴もSIPサーバの電話番号のみで、顧客の電話番号はいっさい外部に出ない。また、顧客から折り返しの電話をもらいたい場合は、それぞれの携帯電話に割り当てられたIP電話の(050で始まる)番号にかけてもらえば、SIPサーバを経由して個々の携帯電話に転送される仕組みだ。
セキュア電話帳のメリットは、端末に履歴を残さないばかりではない。常にSIPサーバを経由して接続されるわけだから、サーバ上には履歴が残るのである。つまり、これまでは不可能であった通話履歴の一括管理が可能になる。
唯一のデメリットといえるのは、SIPサーバが2つの番号に電話をかけて接続を行うため、通信コストが2重に発生するという点。だが、SIPサーバからの発信にはIP電話の回線を用いることができるので、単純にこれまでの2倍の料金がかかるということではない。発信先によっては、これまでの通信コストよりも下がるケースもあるだろう。
NTTドコモでは、法人向けに「iアプリ電話帳」というセキュリティに配慮したシステムを提供している。また、KDDIには端末内部のアドレス帳データを遠隔で消去できる「ビジネス便利パック」というサービスがある。富士通のセキュア電話帳をこれらと比べた場合、利用する携帯のキャリアが混在していても良いというメリットがある。
顧客情報の漏えいを防止するためにいろいろな手段、考え方があり、またそれぞれに必要となるコストが変わってくる。お金に変えられないほど重要な顧客情報を扱うのならば、こうした専門的なシステムへの投資も十分に検討の余地がある。
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