技術を開発し、チップで儲ける──QualcommのビジネスモデルBREW 2006 Conference(3/3 ページ)

» 2006年06月01日 01時54分 公開
[林信行,ITmedia]
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技術の裾野を広げる

 Qualcommは、自社のチップビジネスを成功させるために、魅力的な携帯電話をつくる技術を提供していかなければならない。同社が最新のGPS技術や注目のモバイルテレビ技術など、新技術の開発に積極的にとりくむのはそのためだ。しかし、同社が開発する最良の技術が、必ずしも新機能の開発だとは限らない。

 同社は新機能を搭載した最新チップセットを開発する一方で、これから携帯電話が広まりつつある中国やインド、中南米市場向けに安価な携帯電話を開発するための技術開発にも積極的に取り組んでいる。

 例えばCDMA2000端末の低価格モデルの価格は2002年時点では98ドル前後(最低価格78ドル)だったが、2005年には54ドル(同48ドル)にまで下がっている(インドでは40ドル代の製品が提供されている)。

 同様にW-CDMA端末の価格も2003年第4四半期に436ドル(412ドル)だったものが、わずか2年で197ドル(141ドル)にまで下がってきている。

 こうした低コスト化は1つのチップ上にさまざまな技術を統合したり、チップを小型化する配線技術などによって実現している。

よりオープンで発展性のあるビジネスを目指す

 「Corporate Day」のランチセッションにはQualcommのスティーブ・アルトマン氏も姿を現し、同社の方針を説明した。

 アルトマン氏は、「われわれはGSMのように音声通話しかできない端末の提供で製品価格を下げ、価格競争を引き起こすことはしたくない」という。「低価格帯携帯電話の市場でもデータ通信や高速通信の魅力が伝わるような製品づくりをしていきたいと考えている」

 優れた技術を低価格で提供し、ハードウェア(チップ)の利益で回収する。Qualcommのビジネスモデルは、アップルのPC向け楽曲販売サービス、iTunes Music Storeのビジネスモデルにも似ているところがある。iTunes Music Storeは、同サービスで曲を買う行為が広まれば、最終的にその利益をiPodの売り上げで回収できる、という考え方で展開しており、米国では1曲わずか99セントで楽曲を販売している。

 アルトマン氏に意見を聞くと「私はiTunes Music Storeとの比較はいい例だと思わない」という。「iTunes Music Storeは、アップルのプロプライエタリー技術(独占的技術)を使った閉鎖的なサービスだが、われわれは業界全体を盛り上げていこうと、よりオープン指向なサービス展開をしている」(アルトマン氏)。

 Qualcommといえば、もっとも有名なのはauの多くの携帯電話でも利用されているBREWのプラットフォームだが、最近になって同社はMSM7000番台の最新チップセットでマイクロソフトのWindows mobileをサポートすることを発表して世間を驚かせている(5月5日の記事参照)

 MediaFLOやW-CDMA、CDMA2000の現状など、ほかのセッションの内容は追って別の記事で報告する予定だ。

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