いよいよ6月9日に開幕するFIFAワールドカップ。4年前に比べてメディアが多様化したことから、報じる側の戦いも熾烈を極めている。テレビ、BS、CS、PC、モバイル、紙、イベントなどさまざまな配信手段がある中、“持てるメディアを総動員し、連携させたマルチプラットフォーム展開で攻める”と意気込むのがスカパー!でおなじみのスカイパーフェクト・コミュニケーションズだ。どんな作戦で祭りを盛り上げようとしているのかを、スカイパーフェクト・コミュニケーションズの池田邦彦事業開発推進部長に聞いた。
スカイパーフェクト・コミュニケーションズのワールドカップ報道は、4つのメディアを軸に展開すると池田氏。1つ目は衛星放送のSKY PerfecTV!110、SKY PerfecTV!による64試合分の無料放送、2つ目はサポーターをスタジアムに集め、大型ビジョンで試合をリアルタイムで見ながら応援するパブリックビューイングだ。
あとの2つは、同社がインデックスからFIFAワールドカップのIP・モバイル配信権を取得したことで実現した、スカパー!BBとスカパー・モバイル向けの動画配信だ。いずれも64試合すべての動画速報を、1試合あたり最大4分間無料で配信(試合終了後、3時間後くらいに配信予定)。動画コンテンツのほかにもワールドサッカーキング誌との連動企画やエルゴラッソ紙とのアンケート連携企画などの独自コンテンツを用意する。
PC向けコンテンツのスカパー!BBではさらに、外部ブログとの連携やSKY PerfecTV!のサッカー番組出演者によるPodcast配信も行うとしており、4つのメディア間の連携による最大限の相乗効果を引き出したい考えだ。
「例えば、SKY PerfecTV!110(SKY PerfecTV!)のサッカー番組に出演している解説陣は、本格的な解説で人気が高い。本番で放送できなかった解説やコメントなどを、スカパー!BBやスカパー・モバイル向けコンテンツとして展開すれば、それぞれのメディア利用者のメリットになり、各メディア間を結ぶ導線にもなる」(池田氏)
こうしたメディア連携の中で重要な役割を果たすのが携帯電話だ。「携帯電話は、アンケートを取りやすいメディア。例えばSKY PerfecTV!110(SKY PerfecTV!)のワールドカップ番組の生放送中にアンケートを取って、それをすぐ番組に反映できる」(池田氏)。
さらに携帯を使った新たなメディア連携にも取り組んでいる。パブリックビューイングとモバイル、スカパー!BBをつなぐプロモーション企画「Wにくびったけ」がそれだ。
Wにくびったけは、ワールドカップ期間中にSKY PerfecTV!110(SKY PerfecTV!)で放送予定の応援番組で、ほしのあきをはじめとするグラビアアイドルたちが「F組応援団」を結成し、番組を盛り上げる。このF組応援団の特典映像を、イベント会場で配布するチラシやSKY PerfecTV!110のデータ放送画面を入口として配信しようというのだ。
特典映像の配信は、まずイベント会場で配布するチラシから携帯サイトに誘導し、携帯向け動画をダウンロードしてもらうことがスタート地点となる。次に配信するのがPC向け動画で、携帯サイトに記載されたURLにPCからアクセスするとさらなる特典映像を閲覧できる仕組みだ。
通常、携帯サイトへの誘導にはQRコードを利用するのが一般的だが、同社では「TORUGET」という画像認識システムを採用している。携帯にTORUGETアプリをダウンロードし、そのアプリ経由でチラシを撮影すると、特典映像を配信する携帯サイトにつながる仕組みだ。「TORUGETは、携帯カメラで撮影した画像をサーバに送信し、それがサーバに登録された特徴と一致するとサイトに接続できるようにするもの。QRコードは、既に印刷されたチラシに適用するのは難しいが、これなら対応しやすい」。池田氏は、TORUGETのメリットをこう説明する。
チラシ経由でアクセスした携帯サイトの先にあるPC向け特典映像のダウンロードにも、携帯電話が使われる。ここで携帯が果たすのは、セキュリティがかかったPC向けコンテンツの鍵を開く役割だ。PC用の特典映像配信サイトにアクセスすると、QRコードが表示される。鍵開け用システム「モンKey」を内蔵したアプリを携帯にダウンロードし、アプリ経由でQRコードを撮影すると鍵が開いてコンテンツを閲覧できるようになる。
実はこうした施策は、イベントとモバイル動画配信、PC向け動画配信の導線としての役割のためだけに行うのではないと池田氏。「この先にあるのは、携帯を鍵開けや決済手段として使うPC向け動画配信の世界だ」。チラシや雑誌から携帯経由でPC向け動画配信サイトに誘導し、セキュアな動画コンテンツの鍵開けと決済を携帯で行う──こんな利用シーンを訴求するための第1段階であり、その実証実験とリサーチを4年に1度の大イベントで行おうというわけだ。
2006年、メディアは2002年のワールドカップ報道時に比べてデバイス、サービスともに大きな進化を遂げ、その多様化はとどまるところを知らない。報じる側の戦いは、すでにその先を見据えたものになっているようだ。
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