UFJニコスと昭和シェル石油が、昭和シェル石油系列のセルフのサービスステーション(SS)に、非接触ICカード決済サービス「スマートプラス」を導入することで合意した。すでに一部SSでの先行導入が始まっている(6月26日の記事参照)。
周知のとおり、ガソリンスタンドはロードサイドビジネスの「上流」に位置づけられており、利用者の囲い込みのために元売り(大手販売業者)ブランドのクレジットカードを発行している。昭和シェル石油の「シェルスターレックスカード」もその1つである。
このGS系のクレジットカードは「1回あたりの利用額が安定しており、生活のメインカードになりやすい」(カード会社幹部)傾向がある。ガソリンスタンドでの決済金額は、普通乗用車を満タンにした場合で1回5000円〜7000円程度、クルマ通勤をするドライバーなら月数回、そうでないドライバーでも最低月1回は利用する。ETCカードの利用率も高い。ガソリンの小売価格が高騰する中で、ポイントプログラムの魅力も上がっている。
東京など特殊な大都市を除けば、クルマは生活に欠くことのできない足である。そしてクルマはガソリンなしには動かない。GS系クレジットカードは利用率や毎月の利用額の点で、他の提携カードよりも有利といえる。
今回、UFJニコスと昭和シェル石油が「スマートプラス」の導入で手を組んだが、UFJニコスはGS系提携カード発行元のイシュアとして最大手だ。「日本の元売り8社のうち5社がUFJニコスを(イシュアとして)採用している」(UFJニコスIT事業部部長の鳴川竜介氏)状況である。これはスマートプラスにとって大きな強みになっている。
特に今回の昭和シェル石油での取り組みを見ればわかるとおり、急激に増加するセルフサービス型のサービスステーション(SS)では非接触ICクレジットサービスの便利さが如実に表れる。ガソリン高騰を受けてドライバーは「少しでも安く、少しでもお得に」を求める傾向にあり、これはクルマ利用が多い地域ほど顕著だ。この流れにうまく乗れば、スマートプラスが躍進する要因になり得る。
「最近では、エクソンモービルがドトールを(ガソリンスタンド内に)入れたりとか、併設型の店舗が増えてきている。我々としてはそういう世界(GSなどロードサイドを軸としたスマートプラス普及)を作っていけるという自信はありますね」(鳴川氏)
また、地方ではガソリンスタンドを経営する販売代理店が、飲食店や自動車ディーラー、コンビニエンスストアやレンタルビデオといった各種店舗、さらには観光バスやタクシーなど多角的に手がける例が多い。もちろん、これらの地場企業のコア事業はガソリンスタンドである。
「(GS系クレジットカードからの)派生効果というのはいろいろあるのかなあ、と思っています。そして、それはUFJニコスにしか作れないマーケットなので、そういった話はどんどん進めていきたい」(鳴川氏)
これは本コラムでも繰り返し述べてきているが、鉄道など公共交通が単独でFeliCa型サービスを活性化できる地域は、東京や大阪など一部の大都市圏に限られている。それ以外の地域ではロードサイドでの展開と連携が利用率向上で重要になる。UFJニコスは石油元売りと関係が深いことから、この点で有利な立ち位置にいると言えるだろう。
むろん、JCB、三井住友カード、ビットワレットなど他のFeliCa決済推進事業者も、この分野の重要性は理解している。ロードサイドをめぐる各決済方式の勢力争いは、今後も注目である。
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