フィルタリングと児童買春の関係(1/2 ページ)

» 2006年08月01日 09時36分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

 7月31日、東京都は「インターネットの有害情報から子どもを守ろう!! 東京大作戦」と題した説明会を開催した。東京都青少年・治安対策本部や警視庁生活安全部、電気通信事業者協会、日本インターネット協会などさまざまな立場から説明を行った。メインテーマは、“(携帯電話の)フィルタリングサービスの重要性”についてだ。

photo 制定された有害サイトアクセス制限サービスのロゴマークと告知ポスター

 ここで話題になっているフィルタリングサービスとは、有害サイトへアクセスできないよう、携帯キャリアが行う施策。親がフィルタリングサービスに申し込むことにより、子どもの携帯から、出会い系サイトなどの有害サイトにアクセスできないようになる。NTTドコモは「キッズiモード」(2003年8月21日の記事参照)、auは「EZ安心アクセスサービス」(2月2日の記事参照)、ボーダフォンは「ウェブ利用制限」(2005年9月6日の記事参照)という名称でフィルタリングサービスを提供している。ウィルコムも現在、同様のサービスを開発中で、2006年度中にサービスを開始する見込みだ。

 フィルタリングサービスの認知度を高めるための努力もなされている。7月6日、電気通信事業者協会(TCA)は、「有害サイトアクセス制限サービス」(フィルタリングサービス)についての告知キャンペーンを開始すると発表した(7月6日の記事参照)。主な狙いは、これまで3キャリアが別々の名称でそれぞれに展開していた施策を、統一キャンペーンを行うことにより認知度を高めることにある。

 またこの説明会には、大手家電量販店からの出席者が多く招かれていた。未成年が携帯を購入する時は、親の同意が必要になる。そのとき販売員が親にフィルタリングサービスについて説明し、勧めてほしいという意図からだ。

携帯フィルタリングを重視する理由

 なぜ携帯のフィルタリングサービスに注力するのだろうか。警視庁生活安全部の円谷諍明氏によれば、児童買春・児童ポルノ事件の被害にあう児童は年々増えており、2005年に被害にあった子どもは全国で1770人、東京都だけで373人いるという。なお、この場合の「児童」は18歳未満の青少年を指す。

 「2006年上半期だけで、中学生が63人、高校生が46人、無職が52人、有職・専門学校生が1人(出会い系サイト経由で)児童買春の被害にあっている。援助交際をした合計162人のうち、159人は携帯の出会い系サイトから入り込んでおり、PC用サイトからという児童はたった3人。児童が出会い系サイトに踏み込んでしまうきっかけは、ほとんどが携帯インターネットだ」(円谷氏)

 児童買春の被害の入り口がほとんど全て携帯である現状、フィルタリングサービスを使って携帯インターネットから出会い系サイトにアクセスできないようにすれば、児童買春の被害は防げるはず――東京都の狙いはそこにある。

 3キャリアのフィルタリングサービスはどれも無料で利用でき、東京都では効果は大きいと見ている。しかし問題は「肝心の親がほとんど知らない」こと。「親よりも子どものほうがネットに詳しいことが多く、設定も子ども任せになりがち。せっかくフィルタリングの仕組みがあっても、子どもが自分で設定することはまずないので、使ってもらえない」(東京都青少年・治安対策本部の松坂規生氏)

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