ドコモ東海にとって、MNPは千載一遇のチャンス――榎啓一社長に聞く(前編)Interview(2/2 ページ)

» 2006年08月10日 13時04分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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MNPは「千載一遇のチャンス」

 東海地域の現状を総合的に見ると、ドコモ東海は対auではトヨタの影響で戦いにくいが、一方でボーダフォンのシェアが他地域に比べて高いことが、ドコモ東海にとってのチャンスになっている。

 「MNPでは、うち(ドコモ東海)とauがボーダフォンのシェアを取りに行くという構造になるだろうと思いますね。東海のマーケットは人口が1500万人で、契約数は1000万強あります。ボーダフォンはこのうち300万契約弱、ツーカーはauが巻き取りをかけていますが、MNP時点で30万程度は巻き取りきれずに残ると予想しています。このボーダフォンとツーカーの残りの契約者を、我々が狙っていくことになります。

 (全国の)ドコモ全体のシェアが56%あって、ドコモ東海の地域シェアが47%(※1)。9%の差があって、この差分を誰が持っているかというとボーダフォンが持っているんです。ですから社員には冗談で、『ボーダフォンの300万の契約者のうち100万契約は、本来はうち(ドコモ東海)のものなんだ。取り返してこい!』と言ってますよ(笑)」(榎氏)

※1:ドコモ東海資料による累計シェア。他社の東海地域以外の事業エリアにおける契約者数を差し引いた計算となるため、TCAの集計とは数字が異なる。

目標は「シェア50%越え」

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 今回のMNPに際しては、ドコモはシェアを守る「防戦」であると予想されているが、榎氏の考えは違う。ドコモ東海は攻勢に出て、シェアの拡大を狙っていく。

 「私がドコモ東海の社長に着任したとき、目標として掲げたのが『シェア50%以上』にするということです。東海地域でドコモは、過去に一度も50%を超えたことがない。MNPはシェアを拡大する千載一遇のチャンスだと思っています。

 メディアやアナリストの論調は、ドコモはシェアが大きいので流出ユーザーの方が多いというというものです。MNPは『auの一人勝ち』と言われているんですけれど、僕はそうは思わない。少なくともドコモ東海から見ると、我々のシェアは47%で、相手は複数社ですけれども53%があるのですから。シェアを拡大しやすい環境にあるのです。ですから僕は社員に対して、いつも『シェアを獲りにいくことを考えろ』と言っています。そのためにドコモショップの準備もしていますし、端末の確保もします」(榎氏)

 むろん、ドコモ東海の「シェア50%以上」は単なる号令ではなく、冷静な分析に基づいている。対ボーダフォンの勝算があるだけでなく、対auでも攻勢に出られる手応えがある。

 「auは純増数ではいい仕事をしているんですが、しかしですね、auは今年3月にプリペイド携帯電話の数字を変えたんです。プリペイド契約期間を延ばしたので、急に4月、5月、6月のプリペイドの契約が純増になった。たぶん1年以上前のauだったら、あんなことはやらなかった。auが(ドコモとの接戦で)かなり苦しくなってきている証拠だと思う」(榎氏)

 しかもドコモでは、代理店手数料を積んでの「端末安売り合戦」を可能なかぎり避けてきた。特にドコモ東海はこの傾向が顕著で、無理な端末安売りをせず、市場価格の安定に腐心してきたという。その上で好調と言われるauを追い込んでいるので、「auに対しても十分に戦える。(MNPで)いい結果が出せる」(榎氏)と手応えを感じているという。

 ドコモ東海はドコモ地域会社9社の中で、唯一、50%を超えるシェアを持っていない。しかも“トヨタのお膝元”という不利な条件が重なる。しかし、それゆえにMNPに向けて「攻めのドコモ」としてハングリーな戦いを仕掛ける。その戦いと結果は、どちらかというと防戦意識が強い他のドコモ地域会社にとってもカンフル剤になるだろう。東海地域はMNPの攻防戦全体の中で、単なる激戦区以上の意味を持つ可能性がある。

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