トヨタファイナンスは9月12日、FeliCaを利用したクレジット決済サービス「QUICPay」を今秋から本格展開すると発表した。
同社が発行するクレジットカードをQUICPay内蔵の一体型に切り替えるほか、QUICPayとiDの両方を利用できる共用決済端末を開発、加盟店に設置していく。
トヨタファイナンスでは4月から、同社が発行するクレジットカード「TS3 CARD (ティーエスキュービック)」ユーザーに向けてQUICPayを提供している。現在はTS3ユーザーのうち希望者にオプションとしてQUICPayを提供する形だが、10月3日以降はTS3カードにQUICPayを標準搭載する。VISA、MaseterCard、JCBの全ブランドでQUICPay機能を内蔵した一体型のカードを発行する。
秋以降発行するTS3は全てQUICPay一体型になるほか、現在560万人を擁する既存会員のカードについても、更新時に全てQUICPay一体型に切り替えていく。「(一体型カードの発行によって)QUICPayユーザーは1年で100万人を超える。5年経って全会員が切り替われば少なくとも560万人がQUICPayユーザーになる」(トヨタファイナンス常務取締役カード本部長の塘信昌氏)
おサイフケータイ用アプリとして提供しているモバイル型QUICPayについても、12月を目処に即時申し込みサービスを開始する。現在、TS3でQUICPay用アプリを利用するには、申し込みから3日程度かかるが(郵送でIDとパスワードを受け取らなくてはならないため)、12月以降はTS3のユーザーであれば、申し込み手続きの直後にモバイル型QUICPayを利用できるようになる。
加盟店開拓にも本格的に注力する。年内を目処にQUICPayとiDの両方に対応する共用のリーダー/ライターを設置していく。共用リーダー/ライターは、QUICPayとiDの2つの決済スキームへの対応を基本とし、Edyなど他の決済方式についても、加盟店の希望に応じてモジュールで機能追加できるものになるという。
コンビニエンスストア、タクシー、ファーストフードショップなど、従来クレジットカードの利用が少なかった業種で小額決済を普及させる狙い。ロイヤルホスト、サンデーズサン、コジマデンキ、首都高のパーキングエリアなどすでに発表されている店舗のほか、名古屋エリアの加盟店開拓に特に力を入れていく。「2007年には名古屋の駅前にミッドランドがオープンし、トヨタの本社機能が移転する。そこで働くトヨタの社員は当然QUICPayユーザーなので、ミッドランドやその周辺の地下街は全てQUICPayが使えるエリアになるよう、現在交渉を進めている。名古屋駅前から始め、栄、伏見へQUICPayが使えるエリアを広げていく。利用できるエリアを広域で作ることが、一番の宣伝効果になる」(トヨタファイナンス)
トヨタファイナンスでは、iDの提供も検討中だという。TS3カードへQUICPayを標準搭載するという基本方針は変えないが、希望者には子カードまたは携帯用アプリとしてiDをオプション提供する考えだ。「TS3ユーザーの中にはもちろん、iDを使いたいという声もあるだろうと思うので。QUICPayの導入が一段落した、そのあとの話として検討している」(塘氏)
現状、FeliCa決済で最も普及しているのはポストペイ型電子マネーの「Edy」であり、ユーザー数でも加盟店数でも、他陣営を大きくリードしている。
決済方式 | QUICPay | iD | スマートプラス | Edy | Suica |
---|---|---|---|---|---|
前払い/後払い | ポストペイ | ポストペイ | ポストペイ | プリペイド | プリペイド |
会員数(人) | 7万 | 約36万 | 約4万 | 約1920万 | 約1291万 |
利用可能店舗数 | 1万 | 約4万 | 約3000 | 約3万5000 | 約6700 |
トヨタファイナンスが目指しているのは「少額から高額までキャッシュレスで暮らせる社会」だ。「小額決済市場でクレジットをしても儲からない」と認めつつ、60兆円ともいわれる小額決済市場で、キャッシュレス決済の割合を少しでも高くしたい、と話す。
「日本人は、少額の支払いのときに待つとか、後ろに行列ができているのに人を待たせてカードを切るというのは嫌だという気持ちが強いが、QUICPayを入れれば1秒で決済ができる。お客様の利便性を高めながら、当社としてもカード事業を伸ばしていきたい」(トヨタファイナンス執行役員総合企画部長の後藤清文氏)
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