イオン、セブン&アイの参入でFeliCa決済は真に日常化する 神尾寿の時事日想:

» 2007年01月25日 11時23分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 1月24日、イオンとNTTドコモ、東日本旅客鉄道(JR東日本)の3社がJR東日本とドコモが共同開発した、電子マネー「Suica」とクレジット決済「iD」の両方に対応する決済端末を、イオン店舗に導入することを発表した(1月24日の記事参照)

 これはドコモ=JR東日本の「iD/Suica共用スキーム」の中でも特筆すべき大型導入案件であり、大手流通の一角を占めるイオングループが系列全店導入を視野にいれているという点でも注目だ。FeliCa決済の日常域への広がりを端的に示す事例と言えるだろう。

 イオンの発表によると、2月1日からFeliCa決済が導入されるのはジャスコ、イオンスーパーセンター、マックスバリュー、メガマート、カルフールなど関東の89店舗。その後、2008年度中には全国のイオンのショッピングセンター約3700拠点2万3000店にFeliCa決済が広がっていくという。

郊外型SCを手に入れたiDとSuica

 イオングループは総合小売業(GSM)とスーパーマーケット(SM)を中心に幅広い形態の流通網を持つが、その中でも注目はジャスコやダイヤモンドシティといった郊外型の大型ショッピングセンター(SC)でのiD/Suica電子マネー導入だろう。

 郊外型SCはロードサイド市場の中核であり、この分野でのFeliCa決済導入ではEdyとQUICPayがリードしていた。特に後者はセブン&アイグループと提携しており、コンビニエンスストアと郊外型SCの展開では有利な位置についている。

 しかし、今回、イオングループがジャスコやダイヤモンドシティなど郊外型SCでiD/Suicaを大規模導入することで、その構図が変わりそうだ。iDはロードサイド市場でのプレゼンスが大きく強化され、SuicaはJR東日本の“駅と鉄道”から離れて全国に広がることになる。iD/Suicaともにロードサイドの郊外型店舗を“苦手としていた”だけに、イオングループによる面的導入は、この分野での競争で強い追い風になりそうだ。

イオンとセブン&アイが、独自電子マネーで衝突

 さらに、もう1つの注目がイオンの独自電子マネーの動きだろう。イオングループでは、現在準備中のイオン銀行(仮称)を中心に、独自電子マネーを発行する方針だ(2006年3月の記事参照)

 大手流通系の電子マネーとしては、すでにセブン&アイが「nanaco」を発表しており、この春からスタートする(2006年5月の記事参照)。流通大手が電子マネー事業者として参入することで、電子マネーの利用は一般ユーザーに浸透してパイが増える半面、陣取り合戦はこれまでよりもさらに激しくなるだろう。これら流通系電子マネーの動き、競争も注目である。

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