ドトールやケンタッキーだけじゃない――ドコモプレミアクラブ(後編) 神尾寿の時事日想(3/3 ページ)

» 2007年03月05日 14時54分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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早い・安い・確実な市場調査。「プレミアパネル」

 ドコモのプレミアクラブは多くの会員を抱えて、ドコモポイントと連携して各種サービスを提供している。この中で誕生した企業向けの調査・マーケティングサービスが「プレミアパネル」だ。前編で登場したプレミアクラブのアンケート機能の一部が、このプレミアパネルによる調査になっている。

 インターネットや携帯電話サイトを通じたアンケート調査は多くの市場調査会社が用意しているが、プレミアパネルはまず「回収の速さ」が大きな特徴になっているという。

 「プレミアクラブのアンケートはドコモポイントの付与率が高いこともあり、月間70〜80万人の人が公式サイトをチェックしています。そのため回答数2〜3万程度のアンケートでしたら最短3日で回収できます。過去、早かった例としては、4000サンプルを2時間で回収したこともあります」(森氏)

 また、アンケート調査の費用も「他の調査会社の価格表を見て、十分に競争力のある安さにしてある」(森氏)。プレミアクラブの規模の大きさ、ドコモポイントの魅力を背景に、早い・安いを実現しているのだ。

 さらに、この手の調査で重要な「精度」の点でも、プレミアパネルは優れている。

 「まずアンケート調査の基本データとして、ドコモ契約の顧客情報を用いていますから、なりすましがない情報が取れます。さらに定期的にライフスタイル調査を行っていますから、正確性がかなり高い。ドコモが持っている情報も併せて、正確なデータに基づくアンケートが安く・早く取れます」(森氏)

 特にドコモの顧客情報データベースとの連携はかなり密接に取られており、アンケート調査で性別・年齢や家族構成はもとより、契約住所による絞り込みまで可能になっている。

 「あと調査パネルの母数が大きいので、パネルに偏りが生まれにくいのも強みですね。例えば、ある百貨店の通販部門の調査で40代後半の女性といったセグメントで調査をしたことがあります」(森氏)

 こうしたセグメントによる絞り込みは、アンケート実施時にはすでに行われており、調査対象ではないユーザーにはアンケートそのものが表示されないようになっている。調査を希望する顧客企業とプレミアクラブ会員のどちらにも、無駄のない仕組みになっているのだ。

誰にとってもメリットがある会員サービスに

 ドコモプレミアクラブはキャリアの会員制優待サービスとして着実に根付いており、ケータイクーポンによる送客や、プレミアパネルによる調査ビジネスの導入など、様々な点で見るべきところが多い。ドコモ、提携先企業、そして何よりもドコモユーザーにとってメリットが大きい仕組みになっている。

 「プレミアクラブは(ドコモの)会員の皆様に満足していただくためのものです。サービス開始当初からお客様に『ドコモでよかった』と感じていただくために、ここまで育ててきました。この方向性は今後も変わりません」(田中氏)

 キャリアの会員制優待サービスとしては、auも「auプレミアメンバーズ」を3月1日から開始した。こちらも優遇ポイントを軸にした会員サービスになっているが、各種サービス・優待内容の充実では今のところドコモプレミアクラブが先行している。

 「プレミアクラブの各種サービスや会員優待を企画する時に、『それは他社ができるものかどうか』を厳しく見てきました。例えば我々の方が会員規模が大きいだとか、メーカーとの交渉力があるだとか、ドコモのネームバリューだから可能になる提携先企業はどこかだとか、そういった点を重視してきたのです。ですから、auやソフトバンクモバイルが(プレミアクラブを)キャッチアップするにしても、一朝一夕では実現できない時間のかかるものや、投資負担が大きくて難しいサービスが多々あると考えています」(森氏)

 現在、春商戦の店頭では端末や料金、ネットワークやコンテンツのサービスといった“目立つ部分”が注目されている。しかし、多くの成熟市場がそうであるように、携帯電話市場も成熟を迎えた後に、ポイントサービスや会員優待サービスの重要性が増してくる可能性は高い。また携帯電話キャリアの顧客会員組織は、新たなビジネスを生み出す土壌にもなるだろう。プレミアクラブの今後には、ユーザーとビジネスどちらの視点からも注目である。

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