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神尾寿の時事日想:

Suica/PASMO相互利用開始で、首都圏の沿線ビジネスに追い風が吹く

PASMOとSuicaの相互利用がスタートした。1枚のカードで首都圏の公共交通に広く乗れるというメリットだけでなく、駅や沿線の経済活発化、おサイフケータイの利用促進という点でも大きな意味がありそうだ。
2007年03月19日 18時34分 更新

 3月18日、首都圏の私鉄・地下鉄・バス向けのIC乗車券システム「PASMO」が始まった。同日、Suica/PASMOの相互利用、電子マネーのサービスも始まり、首都圏は共同のIC乗車券/電子マネープラットフォームの上に乗った(3月18日の記事参照)。詳しくは18日のセレモニーレポート記事に譲るが、JR東日本の清野智社長の「後年から振り返って、2007年3月18日は大きな意味のある日になる」という言葉は決して大げさではない。

 昨日、筆者も「首都圏ICカード相互利用サービス開始セレモニー」取材の後、JRと私鉄各社の主要路線、駅ナカ・駅周辺店舗での電子マネー利用などを積極的に試した。筆者はモバイルSuicaユーザーであるが、駅と駅周辺ならば、“おサイフケータイをかざす”だけで移動から飲食、ショッピングまですべてが事足りる。この便利さや自由な感じは、今後首都圏で起きるライフスタイルの変化を十分に感じるものだった。

駅と沿線の経済が活性化する

 特に印象深かったのが、「移動の自由」を強く感じたところである。Suica/PASMOの相互利用が始まったことにより、JR・私鉄・バスの乗り換えに、今後わずらわしさを感じることはない。さらにモバイルSuicaのオンラインチャージや、JR東日本や私鉄各社のクレジットカードと連携した「オートチャージ機能」を使えば、公共交通の利用時に運賃のことをあまり考えずにすむ。この心理的効果は大きい。まるで“歩いて出かける”感覚で、公共交通を使うようになるのだ。Suica/PASMOの相互利用はまだ始まったばかりであるが、これが普及して利用率が拡大すれば、これまで以上に公共交通の利用が増えるのではないだろうか。特に、休日に「電車やバスで出かける」人が増えそうである。

 公共交通が便利かつスムーズになり、その利用が増えれば、首都圏の経済圏も変化していく。駅ナカ・駅ウエの商業施設の価値向上とそこでの消費拡大はもとより、今後は大手私鉄各社が力を入れる駅周辺や沿線商業地域の経済も活性化しそうだ。これらの地域はSuica/PASMOの電子マネーが広がり、さらにJR・私鉄各社のポイントやクーポンのスキームで囲い込まれることで、大きなレールサイド経済圏を構築しそうである。

おサイフケータイも「波に乗れ」

 Suica/PASMOの相互利用開始は首都圏の人の流れを変えて、電子マネーと各種ポイント連携を軸にレールサイド経済圏を拡大する可能性がある。この大きな波に、おサイフケータイも乗るべきだろう。

 現在、Suica/PASMOでおサイフケータイ向けサービスを提供しているのは、JR東日本の「モバイルSuica」だけだ。“モバイルPASMO”の登場は未定で、「取り組むべき課題」(東京急行電鉄情報コミュニケーション事業部事業企画部主幹の土屋智永氏、3月16日の記事参照)という段階だ。当面は、JR東日本のモバイルSuicaの訴求と機能拡大が、おサイフケータイの牽引役になる。

 しかし、“レールサイド”まで視野を広げれば、他のプレイヤーにもおサイフケータイ利用拡大のチャンスがある。すでにおサイフケータイ向けのアプリやサービスを提供する企業の多くが、「駅周辺」にあるからだ。ヨドバシカメラやビックカメラなど家電量販店、レンタルビデオのGEO(2005年10月の記事参照)、ドラッグストアのマツモトキヨシ(2006年5月の記事参照)、さらに今年10月におサイフケータイ対応をする予定のマクドナルドなど(2月26日の記事参照)、駅前立地を重視するおサイフケータイ導入企業は多い。これらの企業がSuica/PASMOによる沿線経済活性化の中で、おサイフケータイ向けのポイントやクーポンで連携していけば、さまざまな新ビジネスが生まれそうである。

 Suica/PASMOによる公共交通ネットワークの高度化は、首都圏在住者のライフスタイルを変えて、経済活動に様々な波及効果を及ぼしそうである。FeliCa関連ビジネスの拡大、おサイフケータイの普及・利用促進にとって追い風と言えるだろう。今後の動向を期待をもって見守りたい。

[神尾寿,ITmedia]

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