阪神淡路大震災が起きた1995年1月17日。インターネットはほとんど普及しておらず、携帯電話の国内加入者数はわずか400万人あまり。安否確認は固定電話に、情報源はTVやラジオ、新聞に頼るしかなかった。電話回線は寸断され、輻輳(ふくそう)が起きてなかなかつながらない。マスメディアの報道からは、被災者一人一人が今何を感じ、何を求めているのか見えづらかった。
あれから10年。国内インターネット人口は7000万人を、携帯電話利用者数は8000万人を超え、ネットや携帯が災害時にも重要なインフラとして使われるようになってきた。
昨年10月に起きた新潟県中越地震では、携帯電話を使った安否確認システムが活躍。被災者はBlogで状況を伝え、企業はネット決済で義援金を募った。12月のインドネシア・スマトラ島沖地震でも、Blogによる支援やネット募金が行われ、被災者支援に役立っている。一方で、募金をかたったフィッシング詐欺が多発するなど、新たな課題も浮き彫りになった。
中越地震やスマトラ沖地震が起きた直後、個人ユーザーはBlogで被災状況を生々しく伝えたり、ネット上に散らばる情報をまとめ、救援を呼びかけた。中越地震では、ネット関連企業が安否確認用の掲示板を作成したり、関連情報に地図からアクセスできるサイトを公開。官公庁はWebサイトでボランティアや支援物資を募集するなど、マスメディアの報道では伝わりきらない被災地の生の声をネットが伝えた。
ネット決済システムを持つ企業は地震の直後から募金を開始。国内でははてなやイーバンク銀行の対応が迅速で、イーバンクは中越地震の募金を1日で1000万円集めた。スマトラ沖地震では、米Amazon.comが募金システムを提供。米Microsoftや米Cisco Systemsなど大手IT企業が次々に巨額の支援を表明した。
一方で募金をかたった詐欺やスパムメールも横行した。中越地震義援金口座を記した募集団体が不明なチラシが民家に投かんされ、イーバンクは口座を凍結。スマトラ沖地震では、133ものフィッシングサイトが便乗詐欺を働いたと報じられた。中にはトロイの木馬を仕掛けるサイトもあったという。
スマトラ沖地震後、カナダ人学生が「tsunamirelief.com」というドメインをオークションに出品。「津波被害で儲けようとしている」と批判を浴び、売り上げを被災者救済のために寄付したという。
安否確認にネットが活躍
中越地震では、つながりにくい音声通話に代わって、安否確認に「iモード災害伝言板」が活躍。9万件以上の登録と12万件以上の閲覧があった。NTTの災害伝言ダイヤル「171」も約35万人に利用され、輻輳防止に役立った。阪神大震災時、電話がつながりにくい状態は約1週間続いたが、中越地震時は1日で済んだという。
KDDIとツーカーグループも1月下旬から災害伝言板を運用すると発表。iモードと連携できる仕組みにし、災害伝言板の“キャリアの壁”を破った。ボーダフォンも伝言板設置に向け動いている。
通信各社は、無料で電話できるコールセンターや携帯電話提供のため被災地へと駆けつけ、携帯電話の無料充電サービスも提供した。被災者の携帯電話料金を減免したり、PCメーカーが被災した機器を無料修理するなどして支援した。
被災者捜索にもテクノロジーが手を貸した。中越地震では電磁波人命探査装置「シリウス」が行方不明の親子を発見。子どもの一人は無事救出された。
防災もITで
インターネットは防災にも一役買い始めている。地震が起きる直前に、ネット経由で震度などを警告する「IT自動防災システム」の実証実験がスタート。「震度6、10秒後です」などとアナウンスし、ガスの元栓を閉めたりドアを開けて避難経路を確保する「緊急地震速報通報装」などの実用性が試される。
被災後の対応をITで迅速化する動きもある。GPS&カメラ付き携帯とWeb GISを組み合わせ、被災地に出動しているスタッフの現在地を把握するシステムの実証実験が1月17日に行われる。
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