リビング+:ニュース 2003/07/01 23:59:00 更新

シリーズ:20Mbps超ADSLの検証
「Annex I」のシミュレーション結果とアマチュア無線への干渉対策

下り最大24Mbpsあるいは26MbpsをうたうADSLサービスと同時に注目を集めたアマチュア無線への干渉問題。「Annex I」のシステムシミュレーション結果を交え、その仕組みと影響を解説する

 6月中旬から後半にかけ、下り最大24Mbpsあるいは26MbpsをうたうADSLサービスの発表が相次いだ。そのニュースリリースの中で、必ず触れられていたのが「アマチュア無線への干渉対策」。そして気になるのは、干渉対策のために下り速度が本来の数値よりも落ちるという点だ。干渉対策の仕組みと、その影響をAnnex Iのシミュレーション結果から探ってみたい。

 干渉対策の方法を説明する前に、まずADSLの仕組みを簡単におさらいしておこう。ADSLは、26kHz〜1.1MHzの周波数帯域の中で、4KHzおきに計255本(G.dmetの場合)の搬送波(bin)、つまりデータを運ぶ波を作り出す。個々の搬送波は最大15bitの伝送能力があり、1秒間に約4000回の変調を行っている。

 新しいADSLサービスでは、使用する周波数帯域を従来の倍にあたる2.2MHzまで拡大する「ダブルスペクトラム」を採用。搬送波の数を479本まで増やし、S=1/4技術とあわせて20Mbpsを超える下り速度を実現する。ADSL事業者によって使う技術に多少の違いはあるものの、この部分は共通だ。

 ここで問題になるのが、拡張された部分にアマチュア無線バンド(1810k〜2000kHz)があり、干渉する可能性が指摘されていること。そこで、該当部分の送信電力を落とし、干渉を避ける。これが干渉対策だ。下図ではPSD(電力スペクトル密度)マスクに“切れ目”をつけたように見えるが、一般的に「ノッチング」(意味は、切れ目をつける)と呼ばれている。

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アッカ・ネットワークスが公開しているAnnex Iの下り送信PSDマスク。アマチュア無線バンドの送信電力を-80dBm以下に抑えている

 ただし、ノッチングによって搬送波の伝送能力が削がれると、そのぶんADSLの伝送速度も落ちる。前述のように、1つの搬送波は4KHz幅のため、1810kHz〜2000kHzの中には、50本のサブキャリアが存在する。そして、1つのサブキャリアが一度に運べるデータ量は最大15bit。15bit×50本×4000(ADSLは1秒あたり4000回の変調を行う)という計算により、スピード低下の数値を導き出すことができる。アマチュア無線バンドにある搬送波が完全にカットされた場合、下り速度は2.4Mbpsのマイナスだ。

 ただし、この数字はあくまでも理論値。実際は、どの程度の速度低下につながるのだろうか? 新しいADSLサービスの情報はまだあまり出てきていないが、ある事業者に「Annex I」のシステムシミュレーション結果を見せてもらった(残念ながら写真撮影は不可。ご了承いただきたい)。

実際の速度低下は?

 シミュレーション結果では、グラフの左端〜つまりNTT収容局に最も近い場所のリンク速度は26M〜27Mbps程度となっていた。ただしこれは“ノッチングなし”の場合。“ノッチングあり”になると、24〜25Mbpsになるという。その差はおよそ2Mbps。NTT東日本は、「フレッツ・ADSL モアII」の発表文のなかで、「下り最大速度は概ね26Mbpsですが、アマチュア無線への干渉対策により、最大概ね24Mbpsとなります」と記述しているが、おそらく、この数字が根拠になっているのだろう。

 もう1つ注目したいのは、NTT局からの距離が長くなるにしたがい、速度低下の割合が減っていくことだ。NTT局から1.5キロほどの距離では、Annex Iの下り速度はおよそ10Mbps。“ノッチングあり/なし”のどちらでも、ほとんど差は見られなかった。

 考えてみれば当然のことだ。電気信号は周波数が高いほど減衰しやすいという特性がある。そして、ダブルスペクトラムADSLが使う26kHz〜2204kHzの中で、アマチュア無線バンドは比較的高い部分にあたる。資料を見せてくれた事業者は、「ハムバンドノッチによる影響が出るのは、NTT局から0.5キロ以内に住む、近距離の人たちと考えられる」と指摘していた。

 つまり、アマチュア無線バンドを使う、使わないという以前に、そこまでの周波数帯を使えるADSLユーザー自体が少ないことがわかる。そして、影響があるのは、既に十分な速度が出ている“恵まれた環境”の人達だ。競争上、少しでも速度を向上させたいADSL事業者は拘るかもしれないが、個々のユーザーが気にする必要はないと思われる。

フィールドテストは行われるのか?

 一方、気にしているのはADSLの干渉を受ける可能性があるアマチュア無線ユーザーのほうだ。1.8M〜2MHz帯の利用は3年前に認められたばかりということもあり、総務省が意見募集を行った際は、個人から多くの意見が寄せられた。

 こうした状況を受け、DSL作業班の報告書には、該当する周波数帯の送信電力を-80dBmに抑えることを必須とする項目が盛り込まれた(上の図を参照)。議論は、この-80dBmという基準の妥当性を検証するためにフィールドテストを行うかどうか、という点に移りつつある。

 今のところ、フィールドテストの実施を表明したADSL事業者はなく、総務省側も積極的に音頭をとる姿勢は見せていない。テストの実施は事業者の自主性に任される可能性が高いが、いずれにしても今後のTTC会合で何らかの結論が出るはずだ。

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関連リンク
▼NTT東日本のニュースリリース
▼12Mbps超サービス技術仕様(アッカ・ネットワークス)

[芹澤隆徳,ITmedia]



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