ブランディングの後進国であることを示した「東京五輪エンブレム問題」(3/4 ページ)

» 2015年09月07日 07時49分 公開
[川崎隆夫INSIGHT NOW!]
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世界に訴求する「日本の魅力」の整理・分析

 政府は、昨年の6月17日観光立国推進閣僚会議にて決定した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム 2014」の中で、東京五輪・パラリンピックの開催について以下のように述べています。

 2020 年に向けて、2000 万人の高みを目指すためには、「2020 年五輪・パラリンピック東京大会」の開催という、またとない機会を 活かし、世界の人々を惹きつけて、東京のみならず、全国津々浦々に開催効果を波及させるべく、オリンピック・パラリンピック大会開催後も 地域が力強く発展していくためのレガシーを生み出しながら、世界に通用する魅力ある観光地域づくりを行うことが重要である。

 つまり政府は、東京五輪・パラリンピックを観光立国の実現に向けた重要な戦略施策のひとつとして位置づけているのです。よって、そのシンボルマークである「エンブレム」も、日本や東京の魅力、文化を世界にアピールするためのツールのひとつとして捉えるべきであり、単に再度公募を行って、「類似デザインのない、デザイン的に優れた作品」を選べばよい、という次元で語られるべきではないでしょう。

 またネット上においては、一般の人が制作した新エンブレムのデザインが、数多く公開されています。そのほとんどに「和のテイスト」が感じられますが、東京五輪・パラリンピックは日本で開催されるため、至極当然のことだろうと思います。

 もちろん日本の魅力は、単に「和のテイスト」だけにあるわけではありません。日本の魅力はさまざまな領域に点在しているわけですから、それらを一度整理してみる必要があるはずです。しかし今回、ベルギーのリエージュ劇場のロゴに酷似した佐野氏のデザインが、審査員から最高の評価を得て選ばれたことから、組織委員会、審査委員会の中で「エンブレムを通じて日本の魅力・文化を世界にアピールする」という共通認識の形成はもちろんのこと、「日本の魅力」の分析についても、十分に検討されていなかったのではないかと感じます。

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