担当者が語る、アウディが新車プロモーションに宇宙を選んだわけ宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)

» 2015年10月13日 07時30分 公開

宇宙はアウディのブランディングを体現できる場(井上氏)

 今回、アウディが宇宙を活用したプロモーションをやろうとした背景ですが、大前提としてアウディは「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」というコーポレートスローガンを掲げています。これは自動車そのものの技術革新というだけではなくて、プロモーション、CRM(顧客情報管理)、ディーラーコミュニケーションなど、あらゆる企業活動において技術による先進を目指すものです。

アウディジャパン マーケティング本部 デジタル&CRMマネジャーの井上大輔氏 アウディジャパン マーケティング本部 デジタル&CRMマネジャーの井上大輔氏

 また、同時にコンシューマー向けのブランドアトリビュートとして「Sporty」「Progressive」「Sophisticated」の3つを重視しています。

 従来、宇宙というと、あまりに遠い未来だったり、非現実的な存在だったりしたのですが、近年は米SpaceXなどによるさまざまな宇宙ビジネスが登場してきており、手が届くリアリティがある未来へと変わってきたと感じています。そういった意味では、もはや宇宙はDream(夢)ではなくてFuture(未来)になっていて、まさに今こそアウディの求める技術による先進や、Progressiveというブランドアトリビュートを体現できる場なのではないかと思いました。

 また、今回は新型Audi TTという一車種のプロモーションという位置付けにとどまらず、アウディブランド全体のProgressiveイメージを高めるという目的もありました。そうした意味ではプロモーションとしてのスケール感が非常に重要だったわけで、この観点でも宇宙を活用したプロモーションは最適でした。

 実際、アウディはグローバル全体で宇宙を絡めたプロモーションを行っています。例えば、ドイツでは「Mission to the moon」というプロジェクトを進めています。これは月面無人探査レース「Google Lunar XPRIZE」に参戦するPart Time Scientistsというチームをスポンサーし、4WD技術を活用した無人探査ローバーを月面に送り込むというプロジェクトです。

 一方で、単に宇宙を活用すればいいというわけではありません。ただ成層圏に気球を上げるというだけでは、既にプロモーションとして活用されている事例もあり、目新しくはないため、今回はホログラムプロジェクションに挑戦しました。

 加えて、コンテンツの観点からはリアリティを大変重視しました。昨今のネットユーザーは非常に目が肥えており、本当にリアリティがあるものでないと反応しません。だからこそ実際に成層圏まで気球を上げ、映像のリアリティにも最大限こだわり抜きました。

 実際、プロモーションの発表後に、お客さまなどからいただいた反応として「こんなの見たことない」「さすがアウディ」といった好意的な意見がとても多かったです。一方で「分かりにくい」という声もいただきました。こうした評価はProgressiveな挑戦にはどうしてもついて回るものだと思っています。そういった意味ではアウディとして事前に想定した反応をいただけましたし、今回の挑戦には非常に意味があったと思います。

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