PC事業統合は決定的? 見え隠れする東芝、富士通、VAIO各社の思惑ニュース解説(4/4 ページ)

» 2015年12月15日 07時15分 公開
[大河原克行ITmedia]
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まったく新しいPC創出の可能性も……

 だが、注目しておきたい部分もある。

 3社のPC事業は重複する部分も多いが、一方で補完部分もあるという点だ。

 東芝は、ノートPCにおいては長年の実績を持ち、モバイル分野においても数々の成果を上げている。米Microsoftと米Intelとの緊密な関係も強みだ。北米市場を中心に、グローバルモデルとしての「dynabook(ダイナブック)」ブランドの浸透度も高い。

 富士通は、国内生産の強みを生かして、保険、金融分野などにおいては、それぞれの企業に最適化した形で製品をカスタマイズ。日本のユーザーの声を反映したモノづくりも特徴だ。携帯電話事業と融合した開発体制も富士通ならではのものである。

 そして、VAIOは、より尖ったモノづくりに力を注ぎ始めており、デザイナーやアーティストなどを対象とした製品提案もスタートしている。小規模だからこそできる付加価値型製品は、東芝や富士通にはないものだ。

 3社のPC事業統合は、決定事項ではないため、それぞれのブランドを維持した形になるのか、あるいは、ブランドを統合することになるのかといったことは、統合決定以降の話になる。しかし、それぞれの技術やノウハウを持ち寄った新たなPCが創出されるのであれば、それはそれで期待をしたいところである。

著者プロフィール

大河原克行(おおかわら かつゆき)

1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、25年以上にわたり、IT産業、電機業界を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PC Watch(インプレス)の「パソコン業界東奔西走」をはじめ、新聞、ビジネス誌、Web媒体などで活躍。著書に、「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(KADOKAWA)、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「図解 ビッグデータ早わかり」(KADOKAWA)などがある。近著は、「究め極めた『省・小・精』が未来を拓く――技術で驚きと感動をつくるエプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)。

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