例えば、パナソニックの群馬・大泉工場だ。ここでは、コンビニやスーパーなどに設置する冷蔵、冷凍庫などのコールドチェーンを生産している。セル生産方式(1人または少数の作業者チームで、製品の組立工程を完成まで受け持つ生産方式のこと)のこの現場ではウェアラブル端末が活躍しており、作業員はHMDと音声認識端末を装着しているのである。
いま、製造業の現場では、多品種少量生産が進む。熟練の作業員でも、次々に増える派生機種の組み立て作業の手順を全て間違いなく記憶することは難しい。そこで、HMDに細かい作業工程の情報を表示し、それを確認しながら組み立てているのだ。
HMDであれば、ハンズフリーのため、作業を続けながら、視界の端で情報を確認できる。紙やタブレット端末でマニュアルを見るのに比べて効率がいい。つまり、ハンズフリーのウェアラブル端末は「現場」と相性がいいのだ。
実際、90年代以降から、米航空機メーカーのボーイングや、電気通信事業のベル・カナダなどでは、製造部門における作業手順の表示や電話修理担当の技術者用として、HMDやリストバンド型の端末が先行的に導入されてきた。
また、作業員の生体情報の収集にも活用されている。一例が、建設現場である。大林組、清水建設などの大手ゼネコン各社は、建設現場の作業員用に、ウェアラブル端末を導入している。作業員の生体情報を収集し、健康状態を把握することで、安全管理に役立てることが目的だ。
清水建設は、東芝と共同でリストバンド型の生体センサーを作業員に装着させる。大林組は、NTTコミュニケーションズと共同で、心拍数や心電図などの情報を取得できるウェアラブルセンサー機能つきの繊維素材を使用した作業着を開発した。これを作業員に着用させ、体調を把握することで熱中症防止などに役立てているのだ。
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