東電が家庭契約のシェア2割を失っても痛くない理由電力自由化でどうなる(1/3 ページ)

» 2016年01月28日 07時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

 2016年4月からの電力小売全面自由化に向けて、新規参入する事業者をはじめとする電力各社から新料金が出そろい始めた。

 これまで、一般家庭などでは、自分が住む地域の電力会社から電力を購入する仕組みとなっていたが、電力自由化によって、さまざまな電力小売会社の中から、自分にあった会社を選び、自由に契約できるようになる。地域ごとに分割した全国10の電力会社によって独占されていた市場に風穴があくというわけだ。自由化の対象となる口座数は7000万契約以上であり、7兆5000億円規模の市場が自由化されることになる。

 市場調査によると、料金が5%低下すれば、48%の需要家が契約を変更したいという意向を持っており、実に半分の契約者が動く計算になる。各社の料金設定は、ここが1つのポイントになりそうだ。

電力自由化によって7兆5000億円もの市場が各社のターゲットに 電力自由化によって7兆5000億円もの市場が各社のターゲットに

付加サービス合戦が加速

 だが、現在の電気の調達方法は限られていることもあり、電気料金そのものの割引には限界がある。そのため、各社はさまざまなサービスを付与して、割安感を打ち出し、顧客獲得に力を注いでいるといった様相が強い。

 夜間電力を格安に設定したり、ガス料金とセット割引にしたり、ポイントカードサービスとの連動、携帯電話料金やガソリン料金を割り引くなど、その手法は各者各様。料金そのものの値引きだけでなく、いろいろなサービスの組み合わせによるメリットを判断する必要があるため、消費者側は比較検討の作業が大変だ。

 電力自由化が先行した欧州では、有名スポーツ選手のサインがもらえるといった特典が用意されるなど、細かいサービスが増加。あまりにも料金プランの数が広がりすぎたため、小売事業者が提示できるメニューの数が制限される事態も発生したほどだ。

 今後、参入する事業者はますます増加する見込みで、利用者にとっては各社の料金プランの比較検討に多くの手間がかかることは避けられそうもない。

 実は、2016年4月になっても、既存の電力会社には、料金規制を継続する措置が取られている。つまり、現行の電力会社の小売部門は、既存の料金体系を経過措置料金として維持する必要があり、規制料金と自由料金とが混在した状態でサービスを運用する形になる。

 これは消費者を保護するための措置で、いきなりすべての料金を自由化することで、市場が混乱することを避ける意味もある。料金プランの比較に苦慮するようだと、現行プランのままで契約を続行するという人も増えるだろう。一部サイトでは、比較検討が可能なサービスが提供されているが、とにかく自分に合ったプランを手軽に見つけ出す仕掛けが必要だとも言える。

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