「最恐の殺人地域」を救うことができるのか 武器は日本の意外な“文化”世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)

» 2016年02月04日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

世界的にも治安の良さが評価されている日本

 こうした問題を改善することは必須であるが、それ以外でも治安改善にできる取り組みはある。実は今、世界的にも治安の良さが評価されている日本のある“文化”が、世界で最も危険な中南米を救う可能性があると期待されている。

 日本の「交番」、つまりコミュニティ・ポリシング(地域密着の治安活動)だ。治安が良いことで知られるシンガポールも1981年に世界で初めて日本を参考にした交番のシステムを導入している。

 中南米でまず「交番」システムを取り入れたのは、ブラジルだ。2000年に日本のJICA(国際協力機構)がブラジルのサンパウロで治安対策の協力し始めたことをきっかけに、2008年から「交番」普及プロジェクトとして国内で拡大。2017年にはブラジルの全27州に設置される予定だ。そして今では、ブラジルから、ホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドル、コスタリカに導入する動きが進んでいる。

 もちろん、いきなり「交番」を設置してすぐに犯罪がなくなるなんてことはない。国や行政も、経済状況、格差の問題、またセーフティネットなどを同時に改善していく必要があるし、警官の存在が身近になるために生まれかねない汚職にもきちんと対策しなければならない。統計ではまだ結果はほとんど見えてこないが、実際にはすでに殺人件数が減っている地域もある。だがまだ芽が出るのを中長期的に見ていく必要がある。

 2016年8月から行われる夏季五輪はブラジルのリオデジャネイロで開催される。2014年のサッカーW杯では、大会前にメディアが注意喚起を大々的に行っていたことが奏功したのかどうかは分からないが、日本人で大きな事件に巻き込まれるという話はなかった。

日本の「KOBAN」が中南米で注目されている(写真はイメージです)

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