先代と新型の間でボルボは経営資本が大きく変わり、フォード・グループを離れて中国の浙江吉利控股集団傘下に入った。この変化に際してボルボはエンジンやシャシーを自力開発する必要に迫られた。ボルボは最新トレンドに則り、モジュール化を選択。限られた資金でバリエーションをカバーするために、全モデルのエンジンを共通ブロックに統一した。
それは自動車メーカーとして画期的なコンセプトであり、まさに命運を賭けた勝負だったが、ボルボはこの賭けに勝った。下は1.5トンのV40から、上は2.3トンのXC90までを同じブロックのエンジンで走らせるのは並大抵のことではないが、ブロックを共有するガソリンとディーゼルの2種類を基本に、ターボ、ツインターボ、スーパーチャージャー、ハイブリッドと各種の追加デバイスを組み合わせる戦略でこの課題をクリアした。
ディーゼルアレルギーの北米をメインターゲットとするXC90は、日本仕様も全てガソリンユニットで、仕様として254馬力のシングルターボ(T5)、320馬力のスーパーチャージャー&ターボ(T6)、402馬力(うち87馬力はモーター)のスーパーチャージャー&ターボ&ハイブリッド(T8)の3種のユニットを搭載する。無理が全くないシステム構築だとは思わないが、技術的トライアルとしては非常に意欲的でおもしろく、年産50万台というメーカー規模で生き残っていくための戦略としてしっかり考え抜かれた方法だ。
併せて、シャシーも新世代となった。エンジンルームの写真を見て分かる通り、直列4気筒エンジンに最適化されたエンジンコンパートメントは極めてコンパクトで無駄がない。直列6気筒やV8までの搭載を考慮しなくてはならなかった先代に比べて、パッケージ効率は大幅に向上している。
ボルボは、このエンジン&シャシーの大改革に際して、スウェーデン史上最大の1兆3000億円もの投資を行い、大規模な構造改革を実行した。その成果がフルに搭載された最初のモデルがこのXC90である。
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