街中にあふれる「公害コピー」をなくす方法こだわりバカ(3/5 ページ)

» 2016年02月22日 08時00分 公開
[川上徹也ITmedia]

エンターテインメントで行動する気にさせる

 では、どうすれば、受け手が行動したくなるような「伝え方」ができるのだろうか? いろいろな手法が考えられるが、ここでは同じ鉄道会社で実際にあった「エンターテインメントで優しく脅す」という一例を見てみよう。オーストラリア・メルボルンにあるメトロ・トレインズの事例だ。

 当時、メトロ・トレインズでは、踏み切りを無視して渡ったり、勝手に線路に降りたりするなどバカげたことで事故死する人間が絶えなかった。そこで、2012年、このような事故を少しでも減らそうという思いで、「Dumb Ways to Die(おバカな死に方)」と名付けた事故防止啓発キャンペーンを実施した。このキャンペーンにより人身事故は大幅に減少し、史上最高に成功したWeb動画キャンペーンと呼ばれるまでになった。

 作られたのは3分あまりのアニメーションの動画。一度聞いたら忘れられないメロディーと、キャラクターのかわいらしさ。それに相反するようなブラックユーモアな内容はインパクトがある。

 軽快で耳に残る音楽にのって、ジェリービーンズ風のかわいらしいキャラクターが次々と現れる。しかし彼らはそろいもそろって「髪の毛に火をつける」「クマを棒でつつく」「賞味期限切れの薬を飲む」「ピラニアがいる池に入る」などおバカな死に方をしてしまう。

 やがて死に方はどんどんエスカレートしてブラックになっていく。「ネットで自分の腎臓を両方売っちゃう」「瞬間接着剤を食べる」「核爆弾のスイッチを押す」「狩りのシーズンにシカの格好をする」「大した理由もないのにスズメバチの巣をもて遊ぶ」などといったバカげた死に方をしてまうのだ。

 曲が最後に近づくと鉄道に関するよくある事故死のパターンを紹介する。「駅でホームの端に立つ」「踏み切りが閉まっているのに無視して進む」「プラットホームから線路を渡ろうとする」など。そして「結局、こういうのが一番おバカな死に方」だとまとめて動画は終わる。

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